昭和電工は11月26日、ジスプロシウムを使用せずに、従来品と同様の性能を持つFA向けネオジム磁石用合金を開発し、量産を開始したと発表した。

今回の新合金は、HDD用ボイスコイルモータや風力発電用モータに加え、より添加量の多いFA向けについてもジスプロシウムフリー化を実現した。さらに、ジスプロシウムの添加量が多い電動パワーステアリング用や電気自動車のモータについても、同率でのジスプロシウムの削減を可能とするものであり、将来の資源制約の問題を解決するものという。

磁石の磁力(磁石の強さ)と保磁力(外部からの磁界に耐える力、耐熱性)には反比例の関係があり、高温下になるほど磁力は弱くなる。工業製品や自動車・産業機械の電動モータには、磁力の高いネオジム磁石が使用されているが、ネオジム磁石の耐熱性を高めるために、ジスプロシウムが添加されている。しかし、ジスプロシウムは世界的に資源量が限られるレアアースの中でも特に希少性が高く、採掘される地域も中国の江西省、広東省、福建省などに限定されていることから、省エネルギーの進展などで高性能ネオジム磁石の需要増加が見込まれる中、将来の原料確保が不安視されている。

この状況を受けて、昭和電工ではジスプロシウムを添加せずに添加品と同性能を維持するジスプロシウムフリー化の研究開発に取り組んでおり、すでに2%添加品と同性能のジスプロシウムフリー磁石用合金を量産しているが、今回、4%添加品の性能まで向上させることができたという。具体的には、一般的にネオジム磁石は磁性を持つ主相と粒界相の2相を持つが、今回開発したジスプロシウムフリー磁石用合金で製造した磁石には、鉄を主成分とした第3の相が発生し、その第3相が保磁力を高めていると考えられるとしている。なお、新合金を用いた磁石製造は、従来の工程で対応可能なため、ユーザーである磁石メーカーでの新規設備の導入や工程の追加は必要ない。また、他の省ジスプロシウム技術を併用し、さらに添加量を削減することもできる。

今後も、同技術をベースとしたさらなる省ジスプロシウム化に取り組んでいき、2014年には、6%添加品と同性能を持つジスプロシウムフリー磁石用合金を開発する計画とコメントしている。

(左)一般的なネオジム磁石と(右)今回開発したネオジム磁石の断面の走査電子顕微鏡像

従来品と昭和電工製磁石を用途別に比較したジスプロシウムの必要量(重量比での添加量)