経済入門書作家であり、経済ジャーナリストでもある木暮太一さん。今度の著書は人気漫画『カイジ』(作者・福本伸行氏)のエピソードから働き方について語る『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』だという。働き方の話がたくさん出てくるときいて、木暮さんに話を伺った。今回は、「給料」について。

みんな勘違いしている、給料の考え方!

給料については、「労働力の再生産コスト」というのが日本企業の考え方です。これは資本論のなかでも語られていますし、厚生労働省の発表する賃金構造基本統計調査からも見てとれます。ボーナスはさておき、基本給の中で業績や成果によって左右される部分って5%くらいしかないんですよね。残りの95%がそれ以外のことで決まってくるんです。

年があがればあがるほど扶養家族が増えるはずで、明日もその人が元気で会社に来るためには、より多くのお金が必要なはず…ということで、日本の年功序列型の賃金は成り立っています。そういう構造を知らないと、「俺は営業職で、毎月2,000万円を売り上げているのに、なんで給料が30万しかもらえないんだ」となってしまう。でもそれは、全然関係がないんですよ。

例えばあなたがフリーマーケットに出展するために軽トラックを借りたとします。その日売上げが多かったから、軽トラックの貸し出し料をもっとくれ! と言われたら、とんでもないと思うでしょう。同じことなんです。

携帯電話の料金みたいに、給料のプランを選べれば

木暮太一(こぐれたいち)さん。経済入門書作家、経済ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、著書に『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)、『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)など多数

--木暮さんが考える、理想の給与体系ってありますか?

みんなが安心して働けるためには、全員一律の給料をもらうことが一番の理想かもしれませんが、それは成り立たないと思うので、別の賃金体系が必要です。

今考える理想としては、2パターン用意するべきかと。1つは携帯のプランと一緒で、ずっと固定のもの。ただし会社の人件費として考えると、低い額で固定せざるを得なくなります。その代わり会社がどうなろうと、一定の給料を払い続ける。

もう1つは、振れ幅のおおきい、従量課金のようなもの。業績がいいときはどーんとあがるけど、悪くなったら首を切る。フリーランス的な考え方に近いですね。それを、ひとつの会社の中で選べればいいと思います。

--入社する時に、携帯ショップのように選べたら面白いですね

ダブル定額的なものもあるかもしれないですね(笑)。そろそろ、個人で選んでいかないといけないのですが、会社でそういう制度を作っているところは少ないです。ということは、本当に業績に応じた賃金を得たいと思ったら、フリーランスになる覚悟も持たなければいけないということです。腹をくくって自分でも考えないと、間に合わなくなりますね。「どこでも仕事をやっていける」という自信がないと、もう難しいです。慶応、早稲田、東大でも、非正規で働く人はどんどん増えていくと思います。変なプライドをもったら、社会から捨てられてしまうんです。

『稼ぐ人、安い人、余る人』という本があります。人間の能力を3つにわけたとき、高い能力の人が「稼ぐ人」になるのは当たり前ですね。じゃあ次は中くらいの人が「安い人」になる…じゃないんですよ。中くらいの人たちは、安い仕事をやりたくないと言って、「余る人」になってしまうんです。能力の低い人の方が「自分はこれしかない」と言って、安くてもいきいき稼いでいる。

そこを自分でいいかげん気づいてほしいですね。選り好みをしてしまい、若いうちにたくさん働けなかったら力が身に付かず、ますます状況から抜け出せないという負のスパイラルに陥いる…『カイジ「勝つべくして勝つ!」働き方の話』を読むと、けっこうざわざわすると思いますよ(笑)。

--ありがとうございました!