東京都・江戸川区の猫専門病院に潜入! 飼い主が聞きにくい質問もしてみた

画像はイメージ

東京都内には、数多くの動物病院がある。今回はその中で「猫を専門とした」珍しい動物病院を取材した。クリニックの名前は、猫の病院SyuSyuだ。

猫の病院SyuSyuキャットクリニックとは

猫の病院SyuSyuキャットクリニックは、2005年12月20日に開院した、東京都江戸川区にある猫専門の動物病院。「動物医療の質の向上を常に目指している」病院で、専門性の高い治療を提供している。海外の学会への参加や、他の猫専門病院の見学実習なども行っているとのことだ。

獣医師の山本宗伸さんにインタビュー

今回取材に応じてくれたのは、同院の副院長である獣医師の山本宗伸さんだ。

――山本先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください

単純ですが猫が好き、というのが獣医になったきっかけです。小学生のころ、まだ授乳期の猫を拾って育てたことがありました。ラッキーという名前の子で、キジトラの女の子です。おとなしくてシャイな子でした。その猫にずっと元気でいて欲しいと思い、それが獣医師を目指すきっかけになりました。

――病院の名前が「SyuSyu」となっていますが、この由来を教えてください。

Special(専門性)、Yeam(慕う)、Universal(全ての人)の頭文字をとっています。二度繰り返すとかわいらしく聞こえるせいか、猫オーナーさんたちにも好評です(笑)

――病院のコンセプトは何ですか?

「猫ちゃんたちが落ち着いて治療を受けられる環境を提供する」ことがコンセプトです。もし大きなワンちゃんなどが待合室にいたりすると、おびえてしまう猫ちゃんもいるので…。また看護師も猫の扱いに慣れており、猫がストレスを感じずに検査ができるようサポートしてもらっています。 その他に大切にしていることは、「専門性の高い医療を提供すること」です。海外の学会へ行ったり、しっかり勉強し続けることで、猫ちゃんたちにとってベストな治療をしてあげたいと考えております。

――山本先生ご自身の猫歴について語ってください。

ことぶきちゃん

去年まで猫と一緒に暮らしていました。病院の前に猫が捨てられており、私が引き取ることになった子です。名前は「ことぶき」です。残念ながら白血病ウィルスが陽性であったためわずか1歳半で亡くなってしまいましたが、とても人懐っこく可愛い子でした。

――猫ちゃんの診察でうれしかったこと、大変だったことを教えてください。

うれしいことは、やはり何といっても猫ちゃんが元気になり、飼い主さんが笑顔になってくれることです。

大変だなと思っているのは、病院が苦手な猫の治療です。治療に必要な処置があっても、猫にとって注射は痛いだけですし、病院にいるより家にいた方が猫は落ち着くでしょう。どこまでやってあげるのがその猫のためになるか、常に悩んでいます。

飼い主について質問をしてみました

――獣医師にとって良い飼い主さんって、どんな飼い主さんですか?

たくさん話してくれる飼い主さんです。例えば、「うちの子は粉薬を上手に飲めない」とか「キツイにおいが苦手で…」と話していただければ、「それでは、錠剤にしてみましょう」「においに配慮した薬を出しましょう」など、対策を立てやすいです。

――猫にとって良い飼い主さんって、どんな飼い主さんだと思いますか?

当たり前のことかもしれませんが、猫が嫌がることをしない飼い主さんですかね(笑)。基本的に嫌がることをしなければ、猫に嫌われることはありません。無理やり抱きついたり、嫌がる猫を抱っこしたり…。そういったことをしないでいれば、猫とは自然と適切にコミュニケートできると思います。

――全く質問をしない飼い主さんだと、やはり困りますか?

そういう場合は、こちらから質問をするよう心がけています。漠然と「何か質問はありますか?」という聞かれ方をすると困ってしまう経験は私もあります。投薬に不安を感じていそうな飼い主さんには「猫に薬を飲ませたことありますか?」など、最初はYES/NOで答えやすい質問から聞くようにしています。

――最低限、猫の飼い主に知っておいてほしいことはありますか?

猫の食事について、知っておいてほしいと思います。猫は、適切な食事をとっていればとても長生きする生き物です。総合栄養食を食べてもらい、新鮮な水を飲んでもらうのが一番です。また、猫は食べてはいけない物が結構多いので注意です。猫は、何かのついでに水を飲む習性があるので、家の中には水飲み場を3~4カ所作ってもらえるといいですね。その他にそんなに高頻度にシャンプーに入れる必要がないこと、猫はあまり積極的なスキンシップが好きではないことなども知っていて欲しいことです。

――デブ猫の飼い主さんにはどんなアドバイスをしていますか?

まず、どのぐらい肥満であることを伝えています。ボディーコンディションスコアというものがあるのですが、これは数値によってその猫がどのくらい肥満なのかを知ることができる指標です。その数値を伝えて、自分の猫が肥満であることを自覚してもらうことが猫のダイエットを始める第一歩です。そして肥満だとどんな病気になりやすいか説明しています。

――苦手なタイプの飼い主さんはいたりしますか?

苦手というわけではありませんが、話をあんまり聞いてくれない飼い主さんだと困ることはありますね…。治療に支障がでる危険性があるので。

――どういう猫を見ると、飼い主に愛されているなと思いますか?

殆どの飼い主さんから猫への大きな愛情を感じますが、しっかりブラッシングをして毛の手入れをしていたり、体重の記録をつけて管理していたりすると、熱心な飼い主さんなんだなぁと思います。

――飼い主さんからの質問で、困ったことはありますか?

猫の病気が重く、「治りますか?」「余命何ヶ月ですか?」と聞かれると言葉につまることも…。どんな病気でも100%治ると断言することはできないのです。また、余命については人間に比べるとまだまだデータ不足なので、同じ病気でも予想以上に長生きする猫もいれば、その逆もいます。

最近は猫に関する報告も増えてきています、そうしたデータが集まればより具体的な余命について説明できるようになると思います。

――診察中、飼い主にしてほしいこと、してほしくないことは何ですか?

飼い主さんと離ればなれになると不安になる猫の場合は、採血するときなどに、飼い主さんに隣にいてもらったり、声をかけて頂くとスムーズに検査ができることがあります。

してほしくないことは、診療の際に猫を「無理やり」ケージから出すことです。初めての場所に来ると猫ちゃんはすごく緊張した状態でいます。無理やり引っ張り出すと、それが怒りのきっかけになったりすることも。そうすると治療に取り掛かれなくなってしまうこともあります。

最低でも10分は環境に慣れるのに必要と言われています。それと、大きな声で名前を呼んだり、叱ると猫はよけいに興奮するため注意が必要です。犬とは違い、叱られて反省する猫はいないということも念頭においていただけたらなと思います。

――スムーズに診療してもらうためには、どんなケージがオススメですか?

上が開くタイプのものがオススメです。ケージの側面が開くタイプのものだと、猫ちゃんを外に出すときに引きずる形になってしまうことがあるので。そうした行動は、猫ちゃんに恐怖心を与えてしまいます。上が開くタイプのものであれば、ひきずることなく上に持ち上げることができるので猫を出しやすいです。

また、素材はプラスチックがオススメです。プラスチック製だと固いので、猫ちゃんを中に入れやすいです。やわらかい素材だとチャックを閉めてる間に逃げられたり、中から猫パンチされることもあります…(笑)。

飼い主さんたちが、普段聞きにくいことなどを尋ねてみました

――セカンドオピニオンについてどう思いますか? 飼い主さんの中には、最初に見ていただいた獣医さんの気分を害するかもと気にされる方もいらっしゃいますが…。

それは全く気にしなくていいと思います。説明に納得ができない部分があれば、他の獣医師の話を聞いてみることはすごく大事です。当院でもセカンドオピニオンを求めて来院される方は多いです。獣医と飼い主さんも人間なので性格的な部分での相性もありますしね。

それと、セカンドオピニオンとは少し違いますが、男の人が苦手な猫の場合、飼い主さんが「女性の獣医さんがいい」と伝えて頂ければ女性の獣医師が対応します。反対に男の人の方が好きな猫もいるので、猫ちゃんの好みを教えて下さい。

――治療中、猫にかまれたりすることもあるのでしょうか?

たまにありますね(笑)あまりに猫が暴れてしまうときは検査を中止することもあります。無理に抑えると猫が怪我してしまいますので。人間と猫、お互い怪我がないように気をつけています。

――動物病院の昼休みはすごく長いですが、何をしているのでしょうか?

手術や検査を行っています。実際の休憩時間は10分以下の日もあり結構忙しいです。ずっと休憩しているわけではありません(笑)。

――言葉を話せない猫。「痛い」と感じている部分をどうやって確認するのですか?

猫から直接話を聞けないので凄く難しいですが、顔つきや行動を見ています。耳の向き、瞳孔の大きさ、しっぽの動き、姿勢、鳴き方、食欲の有無、触診に対する過剰な反応、周囲への関心、などです。猫の痛みの研究ではこれらを点数化し、猫がどのくらい痛みを感じているかを客観的に評価しています。

――猫の薬は、余ってしまったらどうすればいいのでしょうか? 病気やケガが再発した際にまた使えるよう、保管する飼い主さんもいらっしゃいますが…。

再発時にとっておいた薬を使ってもらうこともあります。ただ同じような症状でも、原因が違う可能性もあるので、使う前に一度かかりつけの動物病院に相談して下さい。 また猫の薬は粉末状にしたり、半分にカットして出すことも多いです。そうした形状の薬は開封済みで劣化しているかもしれないので、使用期限には注意が必要です。

――良い動物病院、良くない動物病院とはどんな病院だと思いますか?

しっかりと飼い主さんと相談して治療方針を決める病院は、良い動物病院だと思います。また、検査結果についてしっかり説明すること。単に「腎臓が悪いですね」ではなく「なぜ腎臓が悪いのか」「今後どうすればいいのか」と猫の状態をしっかり把握してもらうことを大切にしています。あとは、猫の場合は猫の扱い方に心がこもっていること。これが一番大切なことだと思います。

最後に一言お願いします

――これから病院を訪れる猫オーナーさんに対して一言お願いいたします。

猫は、病気を隠そうとする生き物です。「少し体重が減ったかな」「お腹に小さいしこりがあるな」など、気になることがあれば早めに動物病院に相談して下さい。大切な愛猫の異常に気づけるのは飼い主さんだけです。

また、病院へ連れて行くことによって猫にかかるストレスが気がかりな飼い主さんも多いと思います。同じ検査でもストレスの感じ方は猫の性格によって様々です。病院でも微動だにしないどっしりとした猫もいれば、入院すると緊張でごはんが喉を通らない猫もいます。

検査により得られるメリットと検査ストレスのデメリットを常に考えながら診療にあたっています。連れて行くのを躊躇っているのであればまずは飼い主さんだけで来院して頂いてご相談にのることもできます。猫ちゃんにとって一番いい方法を一緒に考えましょう。

――ありがとうございました。

<作者プロフィール>
うだま
猫漫画家。猫ブログ「ツンギレ猫の日常」は毎朝7時30分に更新。
猫ツイッター(@udama1212)で猫画像を毎日投下し続けている。

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