YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は11月21日、航空宇宙分野向けに対応した高信頼リアルタイムOS「T-Kernel 2.0 AeroSpace(T2AS)」を開発したと発表した。同OSは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2015年度に打ち上げ予定のジオスペース探査衛星に搭載されるという。

宇宙航空分野では、これまで低消費電力とリアルタイム性などが評価されているTRON仕様OSが多く利用されており、9月に打ち上げられた惑星分光観測衛星「ひさき」にはTRON仕様OSの最新版である「T-Kernel」が搭載されている。このような実績から、宇宙航空分野において、TRON仕様OSに関するノウハウやソフトウェア資産が多数蓄積されているが、さらに次世代の「T-Kernel」として、高信頼性検証や開発プロセスが整備されたリアルタイムOSおよび検証方式の開発が求められていた。そこで、YRPは、最新のTRON仕様OSとして一般公開されているリアルタイムOS「T-Kernel 2.0」をベースに、必要な機能を追加した「T2AS」を開発したという。具体的には、安全性の向上、メモリ容量の削減を目的として、OSの機能をユーザがAPI単位で任意に削除し再構成できる機能の他、処理速度に影響しないメモリ保護機能、物理タイマ機能による高精度な時間管理機能などが搭載されている。また、高信頼リアルタイムOSは宇宙航空分野以外にも交通、医療機器、FAなどの分野でも求められ、これらの分野にも「T2AS」は大きく寄与できるとしている。

さらに、YRPでは「T2AS」の検証・開発プロセスの観点から信頼性を確保するため「T2AS 高信頼適用ハンドブック」を作成した。同ハンドブックは、宇宙機に搭載するリアルタイムOSの信頼性を確保することを目的にJAXAが作成した「リアルタイムOS高信頼化ハンドブック」を参考にしている。「T2AS」の仕様書と「T2AS 高信頼適用ハンドブック」は、組み込みシステムおよびユビキタスコンピューティング関連技術の標準化・推進団体であるT-Engineフォーラムの会員向けに公開される。

今後は、「T2AS」や「T2AS 高信頼適用ハンドブック」を元にT-Engineフォーラムの会員企業であるNEC通信システムやユーシーテクノロジなどをはじめとして、「T2AS」製品の提供や汎用マイコンへの移植サポート、および検証サービスなどの提供などが行われる予定。