小児期における長時間のテレビ視聴が、その後の脳の発達や言語能力に悪影響を及ぼすとの研究結果を、東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授、竹内光・准教授らが英国の神経科学雑誌『Cerebral Cortex(大脳皮質)』に発表した。

研究グループは、健康な5-18歳の276人(男133人、女143人)を対象にテレビの視聴時間などの生活習慣を調べ、知能検査や脳のMRI(磁気共鳴画像)撮影検査などを行った。3年後に、そのうちの216人(男111人、女105人)について再度検査を行い、変化を調べた。

一般に生後8か月から10歳ごろまでの小児の脳の発達過程では、それまで過剰に存在していた神経細胞同士の結合(シナプス)が不要なものから除去される「刈り込み」と呼ばれる現象が起き、それに伴い大脳の“灰白質”の量も減少する。

しかし今回の結果、小児期のテレビの長時間の視聴によって、脳の高次機能関連領域が影響を受け、特に脳最前部にある言語能力に関係する「前頭極」という領域で灰白質の減少量が少なかった。

テレビ(ビデオ)の長時間視聴と、その裏腹の関係にある「親子の会話の少なさ」によって、乳幼児の言語の発達が遅れることは、日本小児科学会も独自の1900人調査で明らかにし、「2歳以下の子どもには、長時間見せないように」との提言を2004年に出した。米国小児科学会も1999年に、2歳未満の乳幼児のテレビ視聴を制限するよう提言している。

今回の研究は脳画像の解析によって、テレビ視聴の小児に対する悪影響の神経メカニズムを明らかにしたものだ。

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