放射線医学総合研究所(NIRS)と応用光研工業らの研究チームは11月21日、従来の放射線測定の技術を向上させた放射線検出器「R-eye(アールアイ)」を開発したと発表した。今回の成果の詳細は、11月27日に開催される日本放射線安全管理学会第12回学術大会で報告する予定となる。

R-eyeは、セシウム137などの放射性物質を検出するために同研究チームが新たに開発したサーベイメータ。東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の値を計測するためなどにサーベイメータは利用されている。

R-eye本体サイズは、42cm×63cm×90cm、重量は約20kg。検出範囲は300平方cm、幅16cm(左)。時速1.8km程度で装置を移動させ、繰り返し測定を行って精度を評価。微弱セシウム137線源、7kBqに対して十分に時間をかけた測定では毎分3000カウント、1秒での予測応答は毎分3000±600カウント(右)

従来のサーベイメータは、計測場所で10秒から30秒間留まって計測する必要があり、広い面積を調査するときはその分多くの時間がかかってしまうという問題があった。そのため環境省の除染関係のガイドラインでは、測定作業を少しでも簡略化するために、除染場所の設定や除染効果の確認をする場所をあらかじめ数カ所選択すると示されている。

従来のサーベイメータとR-eyeとの比較。R-eyeは一カ所での計測で多くの面積をカバーできることを示している

同研究チームは、従来のサーベイメータの能力を向上させたR-eyeの開発に成功。R-eyeは、移動しながらでもホットスポット上の放射性物質の値を検出できるというメリットがあるほか、放射性物質を発見したときの応答速度は従来と比べて10倍以上も高速化したことで、短時間で広範囲を検査できる。

】線源の位置を原点とする。左から右に毎秒5cmで移動させた時の出力(針の振れ)が緑色のグラフ、この緑色のグラフから赤い応答を予測するのが予測応答原理

今後同研究チームは、奥まった場所や屋根の上などの高所にも対応できるサーベイメータの開発を進めるとしている。

R-eyeを使ったホットスポット検索のイメージ。左はホットスポットがない場合、右はホットスポットを発見した場合