テクトロニクス社は11月19日、2014年以降の5GHz帯を用いた無線LAN規格の本格普及が期待される一方、そうした広帯域化による高度な測定への対応と開発コストの低減の両立を実現することを目指した測定ソリューションとして、新たに最高165MHzの取込帯域に対応したミッドレンジ価格帯のリアルタイム・シグナル・アナライザ(RSA)「RSA5000Bシリーズ」およびミクスド・ドメイン・オシロスコープ(MDO)「MDO4000Bシリーズ」、同シリーズなどでIEEE 802.11a/b/g/j/n/p/acのテストを容易化に向けたソフトウェア「SignalVu-PC」のオプションを発表した。

RSA5000Bシリーズは、RFのフィルタ性能の改善などを行うことで最大取込帯域を前シリーズの110MHzから165MHzまで引き上げ、160MHzまで用いるIEEE802.11 acの対応を可能としたもの。RFのスペックを必要とするRF IC設計やRFモジュール設計などの上流のエンジニア向けソリューションだと同社では説明する。ベクトル・シグナル・アナライザの機能などを搭載しており、信号捕捉性能を33%改善、最小信号持続時間2.8μsで100%信号捕捉確率を実現。これにより、短時間の信号であっても検出が可能となり、捕捉、保存ができるようになった。また、ノイズフロアに埋もれがちな微小ノイズを手軽に検出することを可能にする「Triggar on This」なども搭載しており、高度な測定を容易に行うことを可能にしたとする。

RSA5000Bシリーズの概要と特徴

一方のMDO4000Bシリーズは、広帯域なWi-Fi信号測定やシステムレベルのトラブルシュートを支えるための時間相関解析機能などが求められる下流領域のエンジニア向けソリューションだと同社は説明する。

オシロスコープながら1台で、アナログ・デジタル・RF信号の時間相関測定が可能。前シリーズから、スペクトラムアナライザ部分の基本的な周波数を生成するブロックの設計を見直すことで、より低い信号ノイズにすることに成功したほか、位相の振り幅を出荷時に調整することでバラつきを抑えることに成功。これにより前シリーズに比べ、SFDRは5dB改善され、代表値は65dBとなったほか、位相ノイズは10~20dB改善し、111dBc/Hz(10kHz時 代表値)に、周波数ノイズの下限も従来の50kHzから9kHzへと性能が引き上げられ、RF取り込み時間も2倍の158msへと延長された。

また、SignalVu-PC向けオプションと組み合わせることで、1GHzの取り込み帯域幅を実現。掃引の必要なしにIEEE 802.11 Spectral Emission Mask(SEM)テストなどを行うことが可能になる。また、もともと同ソフトではオフラインでの解析が可能なため、オリジナルのIQデータを保持しつつ、そのデータを用いて別の解析を行ったりすることも可能となっている。

MDO4000Bシリーズの概要とSignalVu-PCとの組み合わせによりできること

なお、SignalVu-PCのオプションはすでに提供を開始しているほか、MDO4000Bシリーズは11月20日より販売を開始しているが、RSA5000Bシリーズの販売開始は2014年2月予定となっている。

RF開発の一連の流れ、左側から右側にかけて上流工程(チップ開発)から下流工程(機器開発)と移っていき、それぞれの領域で異なる課題が生じることとなる。今回のソリューションはそれらを解決するために開発されたものとなる

左がRSA5000Bシリーズの各機種の値段。右がMDO4000BシリーズおよびSignalVu-PCオプション各種の値段

左からSignalVu-PCが動いているPC、MDO4000Bシリーズ、RSA5000Bシリーズ

MDO4000Bシリーズの最上位機種「MDO4104B-6」

RSA5000Bシリーズの最上位機種「RSA5126B」