安川電機は10月29日、ロボットの小型化で高密度配置を可能にしたことによる設備の省スペース化、ならびにピッキング用の新アプリケーションソフト「MOTOPICK」による無駄のない制御動作でさらなる高速搬送を実現するパラレルリンク機構採用の新型FAロボット「MOTOMAN-MPP3S」(画像1)の販売を11月21日より開始すると発表した。なお「MOTOPICK」単体の販売は、12月20日を予定している。

画像1。MOTOMAN-MPP3S

今回のMOTOMAN-MPP3Sの製品化の狙いは、2011年6月より販売している「MOTOMAN-MPP3」に加えて、設備の省スペース化に対する市場のニーズに応えるというもので、食品・薬品・化粧品などに代表される小物製品や部品などの搬送・整列・箱詰め分野が主な用途だ。また機能向上、ラインナップ拡充の両面により、ユーザーの生産ラインの自動化・最適化にさらに貢献するとした。

MOTOMAN-MPP3Sの主な特長は、(1)クラス最高速の搬送能力、(2)先端軸の(T軸)の高許容慣性モーメント値、(3)中空ボディ、(4)自在ジョイント部(ボールジョイント部)グリースレス化の4点だ。

MOTOMAN-MPP3Sはクラス最高速の搬送能力を有している。画像2の動作パターンにおいて1kg可搬重量設定時には230cpm(cpm:cycle per minute、1分間に決められた動作を何回行えるかという単位)で、同動作パターンで3kg可搬重量設定時の場合は150cpmだ。

画像2。動作パターン

そして先端軸(T軸)の高許容慣性モーメント値を高めることにより、「高イナーシャ(高い慣性)」がかかるような2個取り用のハンドなどの取り付けが可能になった。複数個(2~3個)のワークを1度にピッキングできるハンドを取り付け易くなったため、ロボットの搬送能力をより向上させることが可能だ。

またMOTOMAN-MPP3Sは中空ボディが採用されており、マニピュレータの中心に配管、配線用の中空穴(φ80mm)が設けられた。この中空穴を利用することにより、今まで各設備のロボット動作を考慮して行っていた配管、配線作業が容易になる仕組みだ。

さらに、カバーで覆われていない関節(ボールジョイント)部に日本食品衛生法認証の自己潤滑樹脂が採用された。従来は食品用グリースが使われていたが、今回の自己潤滑樹脂により、グリースの落下といった衛生面に関する懸念がなくなるというわけだ。そのほかにも、さまざまな安全・衛生向上に寄与する構造が採用されいている。

次に、ピッキング用新アプリケーションソフトのMOTOPICKについて。MOTOPICKとは実際にMOTOMAN-MPP3Sが行う搬送作業のプログラムを設定、編集するためのソフトである。こちらの特徴は3点。(1)PCレス化、(2)セットアップサポート機能の充実、そして(3)機能拡充だ。

MOTOPICKでは、従来PCで行っていた処理をロボットコントローラ内で行うことが可能になり、システム稼動中におけるPCとの接続が不要となった。また同ソフトはオープン化される予定で、将来的にユーザー自身による機能の追加を行えるようになる。これにより、ユーザー独自のアプリケーションの構築も可能だ。

また、システム構築や運用をサポートするセットアップサポート用PCソフトが提供される形で、同ソフトは対話形式でセットアップサポートを行う機能が備わっている。セットアップに不慣れなユーザーでも設定漏れなどがなく、容易に作業できるよう工夫されているというわけだ。

そしてさまざまな機能拡充だが、取りこぼし防止機能、品種混在対応機能、コンベヤ速度制御機能など、ユーザーのニーズに応える新機能が追加されている。これにより、ユーザーの構想するさまざまなライン構成に対応するための汎用性が向上しているというわけである。

MOTOMAN-MPP3Sの年間の目標販売台数は、この機首単体の数字ではないが、パラレルリンクロボットシリーズ全体として400台とした。また、販売価格はオープンとしている。なお、MOTOMAN-MPP3Sは2013年11月6日から9日まで東京ビックサイトで開催予定の国際ロボット展で展示される計画だ。