新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、名古屋大学(名大)、ノリタケカンパニーリミテド、名古屋工業大学(名工大)の4者は10月28日、希少金属「セリウム(原子番号58)」の使用量を30%以上低減できる自動車排ガス浄化用「助触媒材」(画像1・2)の開発に成功したと発表した。成果は、名大の小澤教授を中心とした、ノリタケカンパニー、名工大の研究者らによる共同研究チームによるものだ。

新セリアジルコニア助触媒の電子顕微鏡像(粒径約30nm)。セリウムが粒子表面の数nmで濃化した特異な構造(コアシェル構造)を持っていることが確認できる。 画像1(左):STEM像。 画像2(右):ジルコニウム、緑:セリウムの分布を示す分析結果

希少金属は日本の成長を支える産業にとって必要不可欠な材料だが、その偏在性のため特定産出国への依存度が高く、日本の中長期的な安定供給確保に対する懸念が生じている。この問題を背景にして、平成20(2008)年度からNEDOが取り組んでいるのが、希少金属の使用量低減技術および代替材料の開発だ。

その中で、名大の小澤教授を中心とする共同研究チームが取り組んだのが、「排ガス向けセリウム使用量低減技術および代替材料開発/排ガス浄化用触媒のセリウム量低減代替技術の開発」(期間:2011年3月~2012年2月)として、自動車排ガス浄化用助触媒のセリウム量低減技術の開発である。

その成果を基に研究が進められ、今回「ジルコニア」粒子の表面に「セリアジルコニア相」と「セリア相」を形成する「コアシェル構造」(中心の芯(コア)と外側に殻(シェル)を異なる成分を配置する構造の粒子)にすることで、セリウム使用量を30%低減した助触媒用材料が開発された。なお助触媒とは、触媒成分の働きを助け性能を大幅に向上させる成分のことをいう。自動車用触媒では、触媒成分の貴金属に加えて、特に酸素貯蔵能(OSC)を促進する助触媒が重要である。

なおセリアジルコニア(CZ)とは、セリア(CeO2:酸化セリウム)とジルコニア(ZrO2:酸化ジルコニウム)の「固溶体」(結晶構造が同じで元素成分は混合している結晶性固体)だ。1990年代から四半世紀にわたってOSCのため触媒成分として、組成が最適化されながら継続して使用されてきた使われている組成物で、排ガス浄化技術の基本材料として広く知られ、CZ触媒と呼ばれる。

同助触媒はセリアが粒子表面に分布するので、従来の均一固溶体に較べてセリウム濃度の変更が容易になるのが特徴だ。この助触媒を使用した試作触媒は実自動車エンジン試験において、国内法定モード規制値をクリア(画像2)。また、低温での触媒の活性を高めるOSCも改善されている。

ちなみにOSCは、ミクロ空間で精密に酸素濃度の制御を行う触媒の能力のことを指している。エンジン勣作中には、エンジン出力のさまざまな条件にしたがって理論空燃比からずれるため、酸素センサを用いた電子制御によってその調整を行う。しかし、この制御はマクロで空燃比(A/F)を完全に制御できないので、浄化率向上に限界がある。触媒自体によって、ミクロ空間で精密にこの制御を行うのがOSCであり、エンジン排気処理設計の基本技術となっている。

また空燃比(A/F)とは、空気(Air)と燃料(Fuel)の比のことをいう。ガソリンと酸素(空気)を混合して高温の燃焼反応を起こさせる時、水素、炭素、酸素、窒素などの元素が反応して水と炭酸ガスなどの無害ガスに転換するような、化学量論を満たす条件(理論空燃比)で、空燃比を調整すると、3元触媒が最高浄化率を示す。

そしてノリタケカンパニーでは、電子材料用ジルコニアの製造技術をベースにして、このコアシェル構造助触媒材の製造技術を確立。この表面セリア濃化技術を活用することで、白金族使用量の低減が期待できるようになったというわけだ。

画像3。ノリタケ試作品CZ助触媒搭載ハニカム型3元触媒のエンジン排気浄化性能試験結果(CO(一酸化炭素)、NO(窒素酸化物)、THC(炭化水素)排出量、単位g/km)

研究チームの今後の予定は、今回の助触媒を2016年度の実用化を目指して、耐久性評価といった技術開発を進める。また、触媒性能評価用のサンプル提供も開始していくとした。