産業技術総合研究所(産総研)は10月21日、アリーナと共同で、0.1mmの狭間隔部品実装技術を用いた部品内蔵基板(部品内蔵インターポーザ)を開発したと発表した。

同成果は、ナノエレクトロニクス研究部門の青柳昌宏副研究部門長(兼 3D集積システムグループ 研究グループ長)、同グループの菊地克弥主任研究員らによるもの。詳細は、12月12日~14日に奈良市で開催される国際会議「2013 IEEE Electrical Design of Advanced Packaging & Systems Symposium」にて発表される。

(左)今回開発された部品内蔵インターポーザと(右)電源ネットワークのインピーダンスと信号伝送特性

スマートフォンをはじめとした電子機器の高性能化は、これまでLSIに集積されるトランジスタの微細化によって進められてきた。しかし、今後さらに微細化が進むと、素子間の特性バラつきが顕在化すると見られ、製品の歩留りが低下することが懸念されているため、微細化以外の方法で、電子機器全体の処理性能を向上させる必要があり、3次元LSI積層集積化技術が注目を集めている。

一方で、電子機器では省エネルギー化への取り組みが求められている。電子回路の消費電力を削減するには、電源電圧をより低くする必要があるが、電源ノイズの許容量も小さくなるため、電源ネットワークを高周波帯域まで超低インピーダンス化し、電源ノイズの発生を抑制することができる高性能インターポーザが求められている。

産総研では、従来から3次元LSI積層集積化技術の研究開発を行ってきており、これまでにも超高速伝送・超高密度実装を実現するLSI接続インターポーザの開発などに取り組んできた。一方アリーナでは、0.1mmの間隔で電子部品を実装する技術を保有しており、同技術を部品内蔵基板技術に応用展開することを目指した開発を進めてきており、今回、両者の技術を融合させて高性能部品内蔵インターポーザの開発に取り組んだという。

低消費電力で高速動作するLSIを実装するインターポーザでは、電源ネットワークを高周波帯域まで超低インピーダンス化し、電源ノイズの発生を抑制することができるデカップリングキャパシタを内蔵するなどの高機能化が求められている。電源ネットワークのインピーダンスは供給電圧と供給電流、最大リップル電圧の許容値から想定される値以下にする必要があるが、3次元積層集積LSIでは、10Gbps以上の高速信号伝送に対応するため、部品内蔵インターポーザを含めた電源ネットワークのインピーダンスを、直流(0Hz)から10GHz以上の広い周波数帯域で、0.1Ω以下にすることが求められている。この低いインピーダンスを実現するため、インターポーザに従来以上の高密度でキャパシタを実装する必要がある。今回、アリーナの0.1mm間隔の狭間隔部品実装技術を、インターポーザ内層部に応用して0402サイズのキャパシタを高密度に実装し、超広周波数帯域で超低インピーダンスの電源ネットワークを有する高機能な部品内蔵インターポーザを開発したとする。

狭間隔部品実装技術による部品内蔵インターポーザ

電源ネットワークを低インピーダンス化する技術として、部品内蔵インターポーザのほかに、薄膜キャパシタ内蔵方式によるシリコンインターポーザがある。シリコンインターポーザは、シリコンウェハをベースとして、LSIの製造プロセスを適用して作製され、その内層に薄膜キャパシタが形成されている。通常のインターポーザよりデバイスとキャパシタの距離が短くなるため、電源ネットワークのインピーダンスを低く抑制できる。しかし、シリコンインターポーザはLSIの製造プロセスを用いるため製造コストが高く、また、キャパシタの静電容量を大きくするには誘電体を超薄化する必要があり、絶縁不良の発生を抑えるのが困難である。

(左)部品内蔵インターポーザとシリコンインターポーザの模式図。(右)電源ネットワークのインピーダンスの周波数依存性

今回、産総研が保有する評価システムを用いて、開発した部品内蔵インターポーザとシリコンインターポーザについて、0Hz~10GHzの広い周波数帯域の電源ネットワークのインピーダンスを測定したところ、開発された部品内蔵インターポーザは、シリコンインターポーザと同様に電源ネットワークが低いインピーダンスとなり、製造コストや製品信頼性の観点から、シリコンインターポーザに対して十分な競争力を持つと考えられる結果を得たとする。

今回の結果から、実装配線の短縮、部品点数の削減、回路の簡略化などの改善効果が期待できるようになり、機器自体の省電力化、省資源化が促進されることになると研究チームは説明する。また、スマートフォンなどの登場で顕在化している、携帯電子機器の電池寿命不足に対する改善も期待されるほか、部品内蔵インターポーザの普及により、電子機器の高機能化、小型化を推進できるようになることから、高度ユビキタス情報化社会の実現にも寄与することが考えられるとしている。

なお今後は、携帯端末メーカーや半導体メーカーなどと連携を進め、高密度な部品内蔵インターポーザを用いたプロトタイプ機の開発を行い、実用レベルの応用技術開発を推し進める予定とコメントしている。