名古屋大学大学院の山本誠一教授や加藤克彦教授、大阪大学大学院や東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの研究グループは、0.7ミリメートルという世界最高の空間分解能をもつ、マウスなどの小動物用の「陽電子放射断層撮影装置」(PET)を開発したと発表した。これまで以上に、小さな部位での分子の分布や濃度を高精度で観察できることから、創薬研究などに威力を発揮するとみられる。

PETは、生体内に投与した放射性の標識分子(プローブ)から出てくる陽電子が、体内の原子の電子と合体・消滅する時に放出される光(ガンマ線)を検出し、コンピューター処理することで、プローブの分布を3次元画像化する。従来の小動物用PETの空間分解能は、1.5ミリメートル程度が限度だった。

研究グループは、ガンマ線の検出器に新型の半導体光センサーを用いるなどしてより小型化、高精度化し、この検出ブロック8個をリング状に配置した内径34ミリメートルの装置を製作した。マウスの頭部の撮像により、0.7ミリメートルの空間分解能を確認した。

同様な画像撮影装置であるエックス線CTやMRI(磁気共鳴画像装置)は主に生体組織の形態を観察し、PETは生体の機能を観察する。今回の装置の開発で、将来的にはPET/MRI一体型装置への応用も可能だという。

開発した小動物用PET検出器リング

開発した超高分解能PET装置(左)とマウスの頭部画像

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