遊び人の夫をもつと、妻は大変だ。結婚後も独身気分が抜けないのか、家庭を顧みることなく毎晩のように遊び呆ける夫を見ていると、浮気の心配はもちろん、精神的なストレスもたまることだろう。そのうち夫婦仲が険悪になるのも想像に難くない。

B子さんの3歳年下の夫、結婚後も毎晩のように友人と深夜まで飲み歩く

神奈川県に住む34歳の主婦・B子さんも、現在そんな悩みを抱えている。彼女は3歳年下の夫と昨年結婚したばかりで、まだ子供はいない。普通なら幸せな新婚生活を送っているところだろうが、この3歳年下の夫というのが根っからの大酒飲みで、結婚後も毎晩のように友人と深夜まで飲み歩く遊び人だという。

「付き合っていたころから飲み歩くの好きな人だったから、そういう予兆はあったんですけど、結婚したら落ち着くと信じていました。けど、わたしの読みが甘かったですね。彼はまだ独身時代の感覚が抜けていないみたいで、困っているんです」

そう話すB子さんは、以前一度だけ「結婚したんだから夜遊びを控えてほしい」と夫に訴えたことがあったという。今のところ、浮気の疑惑までは抱いていないが、それも時間の問題のような気もする。もとより、夫が使う毎月の飲み代は家計的に大打撃だ。この浪費癖を直さないことには、子作り計画もままならない。そんな思いを胸に秘めつつ、夫のことを更生させようと、一念発起したのである。

しかし、それに対して素直に耳を傾けないのが、この手のタイプの男性だ。彼はまだ31歳と若いためか、年上女房であるB子さんに注意されると、それだけで不機嫌そうな表情になり、夫婦の関係にますます亀裂が走ったという。

ましてや、それによって夜遊びの回数がさらに増えたのだから完全に逆効果だ。金曜や土曜になると朝まで帰ってこないことも珍しくなくなり、日曜日は昼間から男友達と出かけることも多くなった。もしかしたら夫は自分と一緒にいたくないのかな、そんなふうにB子さんが思ってしまうほど生活がすれ違い、火に油を注ぐ結果となったのだ。

この場合、誰が悪いかと訊かれれば、それはもう遊び人の夫だろう。そんな夫の人間性を見抜けずに結婚したB子さんにも多少は自業自得の向きはあるが、それでも必死に夫を更生させようと努力している彼女には同情してしまう。

30歳の専業主婦・E子さんの夫、酒とギャンブルに加え女遊びまで盛ん

一方、世の中にはそういう遊び人の夫を見事に更生させた圧巻の妻もいる。埼玉県に住む30歳の専業主婦・E子さんだ。

彼女の2歳年上の夫もまた大の遊び好きで、酒とギャンブルはもちろん、さらに女遊びまで盛んだというから厄介だ。E子さん曰く、夫の浮気について決定的な証拠をつかんだことはまだないものの、疑惑としては濃厚だという。夫のスーツのポケットの中から、キャバクラ嬢の名刺が出てきたことは一度や二度ではない。

もちろん、これまでに何度も抗議したことがあった。しかし、それはB子さんのケースと同じく、火に油を注ぐだけの結果となり、E子さんは鬱屈していたという。

E子さんは大改革を断行、自分も夫に負けないくらい遊ぶように

そんなある日、E子さんは大改革を断行した。夫の遊び癖は未来永劫治るものではないと諦観したのか、それとも単に精神がハイになっていたのか、遊び呆ける夫のことを一切無視するという開き直った行動に打って出る。

そして、自分も夫に負けないくらい遊ぶようにしたのだ。

このときのE子さんはまるで糸が切れた凧のように、毎日ふらふらと、遊びに夢中になったという。目には目を、遊び癖には遊び癖を、そんな復讐心を胸の中で燃やしながら、夫にあてつけるように女友達と夜な夜な飲み歩き、無断で旅行にも出かけ、ホストクラブやサパーなどで男遊びにも興じた。

おかげで家事はおろそか、家計は火の車となったが、もはやE子さんにとってそんなことはどうでも良かった。金がないなら借金すればいい、もとはといえば夫が悪いのだ、と安易に考えるほど精神が錯乱していたらしく、離婚も厭わないつもりだったという。

すると、不思議なもので夫の態度が急変した。

「ごめん、俺が悪かった。これからは俺も落ち着くようにするから、おまえも元に戻ってほしいんだ」。夫はそう言って、申し訳なさそうに頭を下げた。「結局、俺がおまえに甘えていたんだよ。おまえが専業主婦として家にいてくれるから、それに安心して遊ぶことしか考えていなかった。けど、おまえが家にいないことが増えて気づかされたよ。せっかく夫婦になったのに、こんな生活嫌だよな。俺はおまえにつらい思いをさせてたんだな」

その言葉を聞いて、E子さんは目頭が熱くなったという。別に最初から夫の更生を狙っていたわけではなく、ただ単に自分の精神が乱れただけなのに、それが結果的に夫の胸を打ったようだ。夫婦の片割れが家庭のことを考えなくなるということは、妻だけでなく夫にとっても大きな苦しみであり、不安だったのだ。

かくして、E子さんは元通りの地道な生活に戻った。夫も遊びを控えるようになり、現在は貯金に奮闘しているという。二人はようやく夫婦になったのかもしれない。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。早稲田大学卒業。これまでの主な作品は「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」「雑草女に敵なし!」「Simple Heart」など。中でも「雑草女に敵なし!」は漫画家・朝基まさしによってコミカライズもされた。また、作家活動以外では大のプロ野球ファン(特に阪神)としても知られており、「粘着! プロ野球むしかえしニュース」「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「野球バカは実はクレバー」などの野球関連本も執筆するほか、各種スポーツ番組のコメンテーターも務めている。

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