帝国データバンクは17日、「出版業界2012年度決算調査」の結果を発表した。それによると、2012年度の売上高上位10位に入った大手出版社のうち、7社が減収となったことがわかった。

同調査は、2010~2012年度の業績が2013年9月時点で判明している出版社、出版取次業者、書店経営業者の計1,167社を同社のデータベース・企業概要ファイル「COSMOS2」(144万社収録)から抽出し、分析したもの。今回は2010年11月1日に続いて2回目となる。

出版社(654社)について2012年度の売上高を見ると、集英社が前年度比4.4%減の約1,260億9,400万円でトップ。以下、講談社が同3.3%減の約1,178億7,100万円、小学館が同1.4%減の約1,064億6,600万円、角川書店が同0.7%減の約399億100万円、日経ビーピーが同1.0%減の約383億円、宝島社が同18.9%減の約269億9,500万円と続いたほか、8位の東京書籍も同7.3%減の約250億5,200万円となった。上位10社中7社が減収し、このうち、講談社、小学館、日経ビーピーの3社が2期連続減収となった。

出版社全体における減収企業は54.9%(359社)と、依然として過半数を占めた。

出版社 2012年度売上高上位10社

一方、損益状況を見た場合、売上上位10社中9社が2期連続黒字となったのに加え、2012年度は全10社が黒字を計上。全体では79.2%(518社)が黒字企業であることがわかった。

取次業者(212社)の状況を見ると、2012年度の売上上位8社中6社が減収。このうち、トーハン、大阪屋、栗田出版販売、太洋社の4社が2期連続減収となった。全体では62.7%(133社)が減収企業となり、比率は2011年度の46.7%より16ポイントも高くなっていた。

他方、損益状況については、日本出版販売、トーハンの大手2社を含む売上上位8社中4社が2期連続黒字、売上上位30社を見ても7割(21社)が2期連続黒字となった。全体では2012年度の黒字企業は84.0%(178社)だった。

書店経営業者(301社)の状況を調べたところ、2012年度売上高1位の紀伊國屋書店を含め、売上上位10社中6社が減収。このうち、紀伊國屋書店、フタバ図書、文教堂の3社が2期連続減収となった。それに対して、売上31位以下では46.5%(126社)が2期連続減収となり、小規模の書店経営業者ほど売上減に歯止めがかかっていない現状が浮き彫りになった。なお、全体では68.8%(207社)が減収だった。

損益状況について見ると、黒字企業は71.8%(216社)。売上上位10社中7社が2期連続黒字で、上位30社で見ても3分の2に当たる20社が2期連続黒字だった。一方、売上31位以下では2期連続赤字が16.6%(45社)と、売上上位30社の10.0%を大幅に上回った。

帝国データバンクでは、「まとめ」として、グローバル化とデジタル化に対応すべく、角川書店、メディアファクトリーなど連結子会社9社を合併して10月1日に新生「KADOKAWA」が誕生したことについて、「外部環境の変化に迅速かつ大胆に対応し、さらなる大きな成長機会を目指して組織再編に踏み切った形」とし、こうした動きの背景には、出版市場の縮小があると指摘。

出版科学研究所によると、2013年上半期の推定出版物販売部数は、書籍が3億6489万冊(前年同期比0.1%増)、雑誌が8億7627万冊(前年同期比6.3%減)となっている。書籍よりも雑誌の方が部数の減少幅が大きく、このため、雑誌部門の比率が高い大手出版社を中心に、厳しい決算内容が続く結果となった。

帝国データバンクは、今回の調査結果について、「出版社、出版取次、書店」という出版流通の"川上"から"川下"に至るまで、いずれも減収傾向に歯止めがかかっていない現状があらためて浮き彫りとなるとし、各社ともに、今後の成長が期待される「電子書籍」への対応・展開を進めているが、売り上げへの寄与は限定的なものにとどまっていると指摘。現状ではむしろ、「電子書籍の台頭が紙媒体の一部需要を奪う"負の側面"が大きいようだ」としている。