放射線医学総合研究所(放医研)と京都大学(京大)は10月16日、放射線によりプラスチックで生じた光の挙動を超高純度化により改善したことを発表した。

同成果は京大 原子炉実験所の中村秀仁 助教(放医研 客員協力研究員・千葉市科学都市戦略専門委員)、高橋千太郎 副所長・教授、佐藤信浩 助教、放医研の白川芳幸 部長、北村尚 係長、クラレの新治修グループリーダー、斎藤堅 部員らによるもの。詳細は、米国物理学協会速報誌「Applied Physics Letters(APL)」に掲載された。

放射線により光を放つプラスチックは、素粒子・原子核実験といった基礎科学分野から福島県での除染作業時での放射線計測など、さまざまな形状のものが数多く使用されているが、そのプラスチック素材を改善し、放射線により生じる光の挙動をよりよく理解することで、信頼度の高い放射線・放射能情報を得ることができるようになることから、今回研究グループでは、その性能改善に向け、新たに高純度の素材を製作し、生じた光の動きを適切に表現することで、より信頼度の高い放射線・放射能情報を得ることを目指した研究を行ったという。

放射線により生じた光の伝搬を表す基本的なデータに、発生した光の強度が約0.36倍まで減少する距離を示す減衰長と、屈折や反射の状態を示す屈折率・反射率がある。従来、プラスチックであるポリスチレンの減衰長は1mm程度であることが知られていたが、今回、研究グループでは超高純度(99.9%以上)のポリスチレンを製造し、これに放射線を照射することで生じる光の挙動を調べることで、高純度化ポリスチレンの減衰長は一般的なポリスチレンの数十倍以上長い41.6mmであることを確認したという。

また、その屈折率には慣例的に黄色(ナトリウムのD線、589nm)の波長によるものが使用されてきたが、放射線をより厳密に測定することを想定し、放射線により生じた光の波長の分布を考慮した屈折率(研究グループが「有効屈折率」と命名)を求める関数を考案し、これを用いることで放射線の測定精度が向上することを明らかにした。これにより、ポリスチレンにおける有効屈折率は、ナトリウムのD線領域の値(ND=1.59)より高いNeff=1.67であることが求められたとする。

なお、今回の成果から、プラスチックより発生する光の様子、すなわち測定する放射線について、より精緻な理解ができるようになったことから、こうした技術を例えばファイバー型の特殊なプラスチックに応用することで、出力される値の評価や、光の伝搬の様子をシミュレーションするために使用される初期値の信頼度を改善することが可能になり、直接、放射線・放射能測定の高性能化を実現できることが期待されると研究グループでは説明している。また、考案された関数は、放射線により光を生じる他の素材にも使用することができることから、幅広い応用が期待できるようになるともコメントしている。

99.9%以上に高純度化されたポリスチレン