国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は10月17日、神経筋疾患患者情報登録「Remudy」に登録されたデータを解析したところ、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者に対するステロイド治療が、歩行可能期間を延長させていることを確認したと発表した。

同成果は、NCNPの竹内芙実 研究生、中村治雅 研究生(現・医薬品医療機器総合機構 新薬審査第3部審査役代理)、NCNPトランスレーショナル・メディカルセンターの米本直裕 室長、木村円 室長らによるもの。詳細は国際的科学誌「Journal of Neurology」に掲載された。

1974年にDMDに対するステロイド治療の有効性が報告されて以降、主に欧米における研究結果からステロイド治療が短期効果(半年から2年の間、筋力を増強し運動能力を改善させる)をもたらすことが実証されてきたが、現在まで日本で多数例を検討した臨床研究はなく、日本人のDMD患者に対するステロイド治療の有用性は示されていなかったという。

また、ステロイド治療による長期効果(歩行可能期間の延長、心肺機能温存、側彎進行抑制など)を多数例で検討した研究は世界的にみてもそれほどなかったことから、今回研究グループでは、NCNPが神経筋疾患患者情報登録「Remudy」の運用を開始した2009年7月から2012年6月までに登録されたジストロフィン異常症患者を、ステロイド未使用群と使用群(現在使用中と過去に使用)の2群に分け、両群の歩行不能になる時期を後方視的に検討を行った。その結果、歩行不能年齢の中央値はステロイド未使用群が10歳1カ月、使用群が11歳0カ月となり、ステロイド使用群の方が歩行不能になるまでの期間が有意に延長していることが明らかになったという。

今回明らかになったステロイド薬(プレドニゾロン)による歩行機能の延長効果

この結果は、日本だけでなくアジアをはじめとする各国においても、DMD患者・医療者の治療法の選択に対して有用な情報を提供していると考えられると研究グループでは説明しており、今後の研究から、DMD患者のステロイド治療に関する詳細な臨床情報(使用量、開始時期、副作用など)の解析と、心肺機能温存、側彎進行の抑制など長期効果につながる安全で有効な投与方法を明らかにすることが期待されるとコメントしているほか、希少疾患全般の登録システムを整備し、同様の研究手法を他の難治性希少疾患の臨床研究に応用していくことにより、それぞれの疾患の治療の実現化に向けた開発研究が前進することが期待されるとしている。