タクシー暴行 示談金の相場は「治療費別で20万円」と運転手

 サッカー元日本代表の前園真聖氏や、女優・松雪泰子さんの弟でミュージシャンの松雪陽(本名・陽平)容疑者など、この数日、タクシー運転手への暴行事件が相次いでいる。

 いずれも酩酊していたとはいえ、酔いに任せて日頃の鬱憤を晴らされては、タクシー運転手もたまったものではない。度重なる暴行事件について、現場の乗務員たちは何を思い、どんな防衛策を取っているのだろうか。当サイトでは、大手法人タクシーのベテラン運転手2名に匿名で話を聞いた。

 * * *
――タクシー運転手に対する客の暴行事件が後を絶たない。現場ではよくある話か。

A氏(40代):さすがに暴力を振るえば警察沙汰になるので、それほど頻繁に起こるケースではありません。同僚ドライバーから聞いた話では、こういう暴行を受けた場合の示談金の相場は、治療費とは別に約20万円だそうです。

B氏(50代):ウチの会社のハイヤー運転手は、過去に某議員秘書に殴られて警察沙汰になったことがある。そのときは議員本人がすっ飛んできてポンと50万円払ったみたい。結局、裁判までもっていくか、示談にするかしかありませんからね。今回みたいに著名人の場合は、一本(100万円)ぐらい持ってきたのかも、なんて憶測が飛び交っていますよ(笑い)。

――そもそも、酔っ払い客を乗せる場合のマニュアルはあるか?

A氏:基本的に自分で行き先が言えないお客さんは乗せなくてもいいことになっている。行き先が言えるのに降ろしてしまえば乗車拒否になりますからね。また、仮に行き先が言えても、あまりにもグデングデンで立っていられないようなお客さんには、近くに仲間がいれば「一緒に乗っていただけませんか?」とお願いするしかない。

B氏:そもそも街中を流しているときに酔っ払いが手を挙げていても見て見ぬフリして通り過ぎることはよくあるけど、タクシー乗り場に並んでいる場合はお客さんを選べませんからね。

――暴行まで受けなくても、車内で吐かれたりすれば仕事にならない。

A氏:車内でお客さんが吐いても何の責任はありませんが、乗務員にしてみたら一度会社に戻ってシートを掃除しなければならないし、場合によってはその日の仕事ができないこともあります。特に忙しい夜間に吐かれると、水揚げ(収入)の損失は大きい。こちらも生活がかかってますからね。

B氏:いざ吐かれたら「困りますよお客さん! 今日仕事できないじゃないですか? どうしてくれるんですか?」ぐらいのことは言いますよ。そこでクリーニング代と称して1万円ほど貰ったことはあります。それでも忙しい時間帯なら全然ペイできませんけどね。

A氏:本心では、酔っ払いのお客さんは乗せたいんですよ。自宅が遠くても面倒くさいから帰りたいという人たちばかりですからね。でも、乗せた途端に吐かれたりして、見極めが難しい(笑い)。

 だから、銀座あたりのお客さんは、そこまでベロンベロンではなく、ある程度は紳士的。かたや、六本木や新宿で乗せるといろんなトラブルにも巻き込まれるから行きたくないという乗務員は多いんです。今回の件も前園さんは新宿、松雪容疑者は渋谷から乗車でしょ。案の定といった感じです。

――いざ暴行を受けそうになったり、実際に受けた場合はどう対処する?

A氏:どんなタクシーでも運転席付近にスイッチがあって、それを押すと行灯が赤く点滅して非常事態を告げる仕組みになっています。会社がいうには、そのスイッチをオンにすると無線センターのほうにも知らせがいくことになっていますが、無意識に触って押していたときには何の連絡もなかった(苦笑)。

B氏:最後は自分で対処策を考えるしかありません。車内で脅しや暴行を受けたら、自然に交番の前で車を停める、車外で暴行を受けたなら周囲の人に助けを求めるなど。

――重要な証拠となる車内カメラの設置は防犯の目的も大きいが、客からしてみたらプライバシーの侵害ともいえる。

B氏:車内カメラは常時録画しているみたいだけど、再生するのはトラブルが起きたときだけだし、見られる人も営業所長や会社の役員に限られている。防犯目的のためなら設置も仕方ないと思います。

A氏:車内外に「防犯システム搭載車」などのステッカーを貼っているので、勝手に録画していることにはならない。カメラが作動していると、われわれ乗務員の行動も縛られていることになるので、あまり気持ちのいいものではありませんよ。

――最近は運転席と助手席の間にプラスチックのボードをつけるタクシーも増えた。

B氏:あの壁をつくることでどのくらい防犯効果があるのかは微妙なところ。遮断することでお客さんの声も聞こえにくいし、釣り銭の受け渡しも不自由。助手席に乗られてしまえばおしまいですしね。

――いくら防犯システムを取りつけても、運転手との意思疎通がうまく図れなければトラブルにも発展しやすい。

B氏:それはその通りです。お客さんとの言い争いや暴行に発展するケースは、殴ったほうが悪いに決まっています。でも、それまでの運転が荒かったりとか、運転手の口の利き方が横柄だったりといったこともよくあります。

A氏:前園さんのケースも「酩酊していて覚えていない」とはいうものの、どの程度酔っていて、暴力に発展するまで運転手とどんなやり取りがあったかは、当事者でなければ分かりませんからね。

 一連の事件を教訓に、私もお客さんと常に最低限のコミュニケーションを取り、気持ちよく乗ってもらえるように努力しなければならないと強く感じましたね。



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