パナソニックは10月15日、40m先にある自動車や歩行者、自転車が20cm離れていれば、0.1秒以下でそれぞれを個別に分離し検知する、ミリ波レーダの高精度・広視野角化技術を開発したと発表した。

ミリ波レーダは、夜間や悪天候時でも、歩行者や自動車を検知できるという特徴を有する。しかし、視野角を保ったまま測位精度を高めるためには、より高いダイナミックレンジが必要だった。また、交差点の全面監視を可能とする、検知エリアもこれまで実現されていなかった。

今回、相補符号を用いた符号化パルス変調技術を、1GHz超の広帯域を使用できる79GHzレーダに適用。これにより、マイクロ波帯と比較してドップラー周波数のシフト量が大きくなるミリ波の物理特性も最大活用できるようになった。具体的には、広帯域化により従来比2.5倍の性能となる距離の分解能20cm以下を達成すると同時に、ドップラー周波数シフトに基づいて測定される速度の分解能1km/h以下を実現した。また、40m先の歩行者検知に必要となる高感度化と車両からの反射ノイズを-40dB以下とする高ダイナミックレンジな反射強度の測定技術に加え、距離、角度、速度を各々独立にかつ高分解能に測定する電子走査技術を開発した。このように、4次元空間の高分解能なレーダ走査が可能となったことで、車両などの極近傍にいる歩行者や自転車に対して、より安定した分離検出ができるようになった。

さらに、ペア符号である相補符号を用いた符号変調のレーダ方式は、強い反射波によるノイズレベル上昇の要因となるレンジサイドローブを、原理的にゼロにできるという特徴がある。一方で、複数のレーダを同時動作させた場合には、アンテナビーム方向が互いに近接する角度領域でも車両などの強反射波が相互干渉の要因となっていた。今回、相補符号の系列に対して重畳するように直交符号化した符号多重ビームの形成技術により、複数のパルスレーダ間で生じる相互干渉を40dB以上抑圧することに成功した。これにより、複数のミリ波レーダを角度領域でセクタ化して同時に動作させることが可能となり、120度以上の視野角と0.1秒以下のデータ更新周期を実現した。

今後、同技術を交差点内の事故を未然に防ぐ検知センサなどに応用することで、安全支援システムの進化と普及を加速させるとコメントしている。

開発技術による適用イメージ比較(車の陰のバイクと道標近くの歩行者の例)。左は従来技術。車とバイク、道標と歩行者を一体のものとして検出する。右は今回の技術。車とバイク、道標と歩行者を分離して検出する

ミリ波レーダーの高精度・広視野角化のイメージ