海洋研究開発機構(JAMSTEC)は10月10日、三重県尾鷲市および中部電力との間で、JAMSTECが管理・運用する「地震・津波観測監視システム(DONET)」により得られる観測情報の活用に関する協定を結んだと発表した。JAMSTECが地震・津波の情報に関する協定を自治体や民間企業と取り交わすのはこれが初めて。

DONETは、基幹ケーブルをループ状に敷設した地震・津波観測システムのこと。三重県尾鷲市古江町の陸上局から紀伊半島の沖合約125km先までの約250kmに渡って設置され、途中5カ所の分岐装置にそれぞれ4つの観測点が接続されている。

各観測点には、水深約1900mから4300mの深海底に観測装置があり、そこから海底ケーブルで陸上から電力を供給している。海底の地震動、水圧変動などのデータは、ケーブルを通じてリアルタイムで陸上局へ送られるため、深海底における多点同時かつリアルタイムに観測できる。なお、取得したデータは、海洋研究開発機構横浜研究所や防災科学技術研究所、気象庁へ配信している。

この協定は、DONETから得られる観測情報の社会実装の可能性を探るためのパイロットプロジェクトとして締結したもの。具体的には、三重県尾鷲市古江町にあるDONET陸上局から複数のルートを介して、尾鷲市危機管理室と中部電力がその観測情報を受け、地震・津波災害対策に当該情報を活用する共同研究について定めた。尾鷲市は地域住民の早期避難誘導への活用、中部電力は管内の発電所の電力設備の安全対策のためにデータを利用する。

JAMSTECはこのプロジェクトによる成果を活用し、ほかの自治体や企業などとも連携を進めていくという。

DONETの設置場所