ARMは10月8日、都内で会見を開き、同社のCPUコア「Cortexシリーズ」およびグラフィックスプロセッサ「Maliファミリ」に関する説明を行った。

ARM プロセッサ部門マーケティングプログラム担当ディレクターのIan Smythe氏

プロセッサの説明を行った同社プロセッサ部門マーケティングプログラム担当ディレクターのIan Smythe氏は、「モバイルデバイスの普及による社会の変革が、インフラの変革にもつながっており、それに伴いARMプロセッサ製品を搭載している機器も携帯端末からサーバやエンタープライズ向けシステムなどへと広がりを見せており、さらに多くのパートナーがそうした分野に参入をしようと取り組みを進めている」とARMコアの適用範囲が広範に及んできていることを強調したほか、性能よりも低消費電力が重要視される分野にはCortex-Mシリーズが、低消費電力を維持しながらハイパフォーマンスを必要とする分野にはCortex-Aシリーズが(リアルタイム性が求められる分野にはCortex-Rもある)それぞれあり、それらが連携することで、スマートフォンからクラウドまで幅広くサポートを可能としているとした。

いまやARMコアは携帯機器だけでなく、幅広い分野に適用されるようになった

ARMの提供するCPU(Cortex)とGPU(Mali)、としてそれをサポートする周辺IP/テクノロジー/ソリューションなど幅広く提供することで、パートナー企業が使いやすい環境を実現している

また、こうした幅広い分野にプロセッサコアを適用できるのも「パートナーがターゲットとしている領域に向け、SoCを作る技術を持っているから」とし、ARMからはこういった使い方ができる、という案内は行っておらず、そうした使い方に対応するべく広範なIPを提供することで、そうしたニーズに対応を図ってきたとする。「こうした多様性の提供が、新たなイノベーションを生み出す基盤を作りだす。ARMコアを活用するためのエコシステムの中心には、エネルギー効率の追求、ARMコアを活用するカスタマたちとのパートナーシップ、そしてパートナーによるイノベーションがあり、それらの組み合わせによりARMコアを活用していく好循環が生み出されている。技術の開発はARMが担当しているが、カスタマはそれを活用し、自社の技術に組み込み、新たな価値を生み出す。それにより新たな市場が生み出され、ARMがそこで最適な技術の開発に向けた投資を行うというサイクルだ」とのことで、例えばCortex-A9は提供し始めのこと、パートナーがどういった活用を行うのかは不明であったが、ふたを開けてみると、現在ではスマートフォンだけでなく、デジタルテレビやSTB、産業機器や車載機器などに向けても提供されるようになっているほか、FPGAにも搭載されるようになり、「ARMの予想を超えた使われ方が進んでいる」という。

Cortex-A9の適用分野。携帯機器やテレビ/STBだけでなく、産業機器や車載、エンタープライズと幅が広い

ARMが取り組んできた低消費電力化技術の数々。競合プロセッサベンダはARMが歩んできた技術を数年遅れて追いかけてきている、というのが同社の主張するところ

そうしたARMコアが最近の注力する技術として、「big/LITTLE」と「HSA(Heterogeneous System Architecture)」がある。big.LITTLEは、低消費電力なARMコアとハイパフォーマンスなARMコアを組み合わせ、処理要件に応じて使い分けを行おうという考えで、システム全体の消費電力効率を向上させようという考えのものなっている。例えばルネサス エレクトロニクスは車載機器向けハイエンドSoC「R-Car H2」にCortex-A15 4コアとA7 4コアの8コア構成を採用しており、ピーク電力は従来のマルチコア製品比で4%程度に抑えることを可能としたという。また、OS上でダイナミックに利用するコアの種類や数を切り替えることが可能であるため、パフォーマンスを発揮したい時、電力消費を抑制したい時などの要件に応じた利用が可能となっている。

ルネサスのハイエンド車載機器向けSoC「R-Car H2」の社内向け評価ボードによるデモ。Cortex-A7 1コアから4コアまで、さらにCortex-A15を1コアから4コアまで、同じ処理を行わせて処理性能の違いなどを見ることが可能

ARM メディアプロセッシング部門パートナーマーケティングVPのDennis Laudick氏

一方のGPUであるMaliだが、その出荷数は年々増加しており、2011年で5000万個だったものが、2013年は3億5000万個から4億個程度まで伸びる見込みだという。

Android端末での採用が中心だが、そうした端末でも解像度の向上ニーズが高く、「スマートフォンでフルHD、タブレットでは4K2Kの搭載が進んでいる。解像度が高くなればなるほどGPUの処理性能を向上させる必要があるほか、別の視点として、さまざまな新機能をGPUに搭載してもらいたいというニーズも高く、顔認識やジェスチャー認識などの機能の搭載も求められている」(ARM メディアプロセッシング部門パートナーマーケティングVPのDennis Laudick氏)とのことで、そうしたさまざまなニーズがある限りGPUの進化は止まることがないとした。

GPUには解像度の向上への対応ニーズのほか、さまざまな処理への対応といったニーズもある

なお、GPUとしても消費電力効率の向上を図る取り組みを行っているとのことで、未使用時の電力オフや、ディスプレイコントローラ企業の買収による技術取得などを進めているという。