海洋研究開発機構(JAMSTEC)と東京大学地震研究所は10月8日、東日本大震災で巨大化した津波の発生場所を特定したと発表した。発生場所はこれまで考えられていた東北太平洋沖震源のすぐ東側の場所ではなく、震源の北東約100kmの場所だという。

今回の研究は、海溝付近に設置した「海底電位磁力計(OBEM)」という観測装置を使い、東日本大震災で発生した津波に伴う磁場の変動を調査したもの。JAMSTECでは、磁場が発生した時刻から津波が観測点へ到達した時刻を検出することができ、同時に磁場データから津波の到来方向を知ることもできるという。

今回使用した東京大学地震研究所の海底電位磁力計(OBEM)の設置風景(左)と、同型OBEMの海底での様子(右)。

この磁場データの解析により、海底観測点で見られる短周期の津波は「観測点のほぼ西方向で発生したこと」「設置点から50km以内の位置で発生したこと」の2つが判明。観測点に対して海溝の反対側に設置した津波計のデータを用いた津波伝播のシミュレーションからも、今回の結果が正しいことが裏付けられるという。

今回明らかになった津波の発生場所と観測装置の位置。観測点から伸びている矢印は磁場データによって明らかとなった津波発生場所の方向を示す。

今後は、津波の規模や発生場所、発生原因をより詳細な掘削調査や海底調査などにより解明することで、沿岸での津波予測の精度を向上することが可能としている。

津波が磁場を発生させるメカニズムを単純化した図。磁場中の導体が動くと中に電気が流れ(発電機と同様の原理)、磁場を発生させる。磁場は地球磁場、導体は海水に対応し、津波が磁場中を動くことによって海水にわずかな電流が流れ、この電流がさらに2次的な磁場を誘導し、OBEMによって検出された。