東京工科大学は10月10日、中東では健康食として知られる「ニゲラサチバ」の種子油に含まれる「チモキノン」が、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβの神経細胞毒性を保護する作用があることを発見したことを発表した。

同成果は、同大応用生物学部の鈴木郁郎助教らによるもの。詳細は、「第8回ヨーロッパ神経科学会」、「第35回日本神経科学会大会」および「日本薬学会第133年会」などで紹介されたほか、科学雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載された。

アルツハイマー病の原因因子の1つに「アミロイドβタンパク質」を主要成分とする老人斑がある。同タンパク質は、凝集することで神経細胞への毒性を発揮し、アルツハイマー病を発症させる主な原因と考えられている。そこで今回、研究グループでは同タンパク質の神経細胞毒性を保護する候補分子として「チモキノン」の作用の検証を実施したという。

具体的には、アルツハイマー病の最重要領域である海馬および大脳皮質の2次元回路モデルに、最も毒性の高いアミロイドβ1-42とチモキノンを同時投与。その結果、アミロイドβ1-42のみの投与に比べて有意に細胞死を防ぎ、活性酸素の発生量の軽減とミトコンドリア膜電位の減少などの細胞毒性を抑制する効果を確認したという。

チモキノンによるシナプス機能低下の保護

また、神経ネットワークの情報伝達場であるシナプス機能および神経活動の低下を軽減させる効果も認められたとのことで、これらの結果について研究グループでは、チモキノンがアミロイドβの神経細胞毒性を保護する効果、ひいてはアルツハイマー病に対して効果があることを示すものだと説明しており、今後、チモキノンの摂取がアルツハイマー病の予防につながることが期待されるようになるとコメントしている。

細胞数を制御した神経回路モデルの構築技術も今回開発された技術の1つとなっている