海洋研究開発機構(JAMSTEC)は10月8日、オーストラリア西岸に現われる地域気候変動現象「ニンガルー・ニーニョ」の予測可能性を発見したと発表した。今回の成果は同社のアプリケーションラボの土井威志研究員らによるもので、Natureの「Scientific Reports」に10月8日付け(日本時間)で掲載された。

ニンガルー・ニーニョ現象は、2011年にオーストラリア西岸域の海水温が異常に暖まり、海洋生態系や農業が甚大な被害を受けたことから、その地域名を取って名付けられた気象現象。エル・ニーニョに代表される熱帯気候変動現象との類似性もあり、近年話題になっている。

今回の研究では、大気海洋結合大循環モデル「SINTEX-F1」を基にした「SINTEX-F1季節予測システム」をJAMSTEC保有のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」で計算。過去30年の当該地域の気候変動データと比較したところ、同現象の発生が半年前から予測可能であることを明らかになったという。2011年に発生したニンガルー・ニーニョの場合は、9カ月前から予測できたという。

観測された2011年2月の海表面水温偏差。オーストラリア西岸ニンガルー沖で海水温が異常に暖まっていることがわかる。

JAMSTECでは、今回の成果により今後は中緯度の大陸西岸域で発生する数百km規模の地域の気候変動現象の予測研究にも役立つとし、ニンガルー・ニーニョに代表される地域気候変動現象と、それに伴う自然災害の早期警戒システムを構築し、季節予測情報が地域社会の活動に貢献できるように展開していく。

オーストラリア西岸域で領域平均した海表面水温が平年値と比べて何度差があったのかを計算したデータ(ニンガルー・ニーニョ指標)

2010年と11年のオーストラリア西岸域でのニンガルー・ニーニョ指標