北海道 むかわ町立穂別博物館は9月29日、2009年に穂別小学校6年(当時)だった中村剛瑠さんが発見した化石が、現生のイカを含むグループである十腕形上目の祖先にあたるものであることを確認したと発表した。

同成果は、独ベルリン自由大学のDirk Fucks助教、北海道大学の伊庭靖弘 助教、独ヘイデルバーグ大学のChristina Ifrim助教、穂別博物館の西村智弘 学芸員、英オックスフォード大学のWilliam J. Kennedy教授、独ベルリン自由大学のHelmut Keupp教授、独ヘイデルバーグ大学のWolgang Stinnesbeck教授、東京大学の棚部一成 名誉教授らによるもの。詳細は、英国古生物学会誌「Palaeontolog」に掲載された。

北海道の白亜紀中ごろから後期にかけての地層からは、以前から謎の鞘形類化石が発見されており、それらは1991年に「Naefia matsumotoi(ナエフィア・マツモトイ)」として記載されたが、それ以降も、鞘形類の進化における位置づけとしては不明な点が多かった。

研究グループは今回、この謎の解明に向け、主に白亜紀の中ごろから後期(約1億2000万年前から6600万年前)の鞘形類化石の標本とデータを世界中から収集し、殻の微細構造(結晶構造)や殻の表面の装飾パターンについて調査を行い、その系統・進化史について再検討を行ったという。

その結果、ナエフィア・マツモトイは、チリなどから産出されるナエフィア属(トグロコウイカ目)と、殻の微細構造、殻表面の装飾、連室細管の位置が異なることから、別のグループであることが判明。この成果を元に、謎の鞘形類を新属「ロンギベルス(Longibelus gen)」(北海道産のものはロンギベルス・マツモトイ)として再記載し、これらが白亜紀の中ごろから後期にかけて、主に太平洋地域に分布し、現生のイカを含むグループである十腕形上目の祖先にあたるものであるという結論を得たという。

穂別産ロンギベルス・マツモトイ。AとBは背面観。CとDは側面観。EとFは腹面観。BとDとDはホワイトニングしたもの。背側の線状の高まり、腹側の連室細管が位置する点などがトグロコウイカ目と異なる

ロンギベルス殻の発見されている部分(左)。右は殻と軟体部(未発見)の関係

中でも、穂別産の標本は、北西太平当地域で最も新しい地層(約7000万年前)から産出された標本として、はじめて報告されたもの。産出された場所からはアンモナイトや二枚貝が多産しているが、ロンギベルスはこの一体のみであり、この種の絶滅時期を知るためなどの重要な手がかりになる貴重なものとなると研究グループでは説明している。

なお、穂別博物館では、10月1日から12月1日までの期間で、ミニ展示として、今回の研究に用いられた穂別産標本と研究の概要が展示される予定となっている。

北西太平洋産ロンギベルスの産出層準と穂別産標本の位置