IDC Japanは、国内の金融IT市場における2013年~2017年の市場予測を発表した。2013年の国内金融IT市場は、大型案件の継続、国内経済回復の兆しが見えていることから、1兆6,919億円で、前年比成長率は1.1%を予測している。

2013年は、自由民主党/公明党連立政権による積極的な経済政策(「アベノミクス」)によって、国内経済は回復の兆しが見えており、多くの業態でIT支出の拡大を見込んでおり、特にメガバンク(2013年の前年比成長率:3.3%)、損害保険(同:2.2%)では勘定系/業務系システム刷新、統合の大型案件が継続していることから比較的高い成長率を予測している。

2013年の国内金融IT市場について

しかし、地域経済の回復は遅れているため、地方銀行(同:0.4%)、第二地方銀行(同:マイナス0.4%)、信用金庫(同:0.0%)、信用組合(同:マイナス1.0%)と地域金融機関では低い成長率にとどまるとみており、また、2014年も大型案件が見込まれるメガバンク(2014年の前年比成長率:3.5%)、信託銀行(同:1.8%)、証券取引所その他(同:1.8%)で比較的高い成長率を見込むが、その他の業態では、ハードウェアの更新需要の谷間でもあり低い成長率にとどまるとみている。

主要システム別でみると、各業態で「勘定系/業務系システム」がIT支出全体に占める割合が最も大きくなっているが、2012年~2017年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)で比較した場合、勘定系/業務システム刷新が行われる一部の業態を除いて「顧客管理系システム」または「チャネル系システム」のCAGRが高くなっていることから、多くの金融機関で中長期的に「顧客管理系システム」または「チャネル系システム」のIT支出が堅調に拡大するとみている。

これは、国内において高い成長が見込めないことから多くの金融機関で収益拡大が重要な経営課題となっており、その解決のためにITを積極的に活用する金融機関が増加していることが要因として挙げられるが、依然として十分にITの活用ができない金融機関も多く存在している。

これを踏まえ、IDC Japan ITスペンディング シニアマーケットアナリストの市村仁氏は「ITベンダーは、システムの導入だけにとどまらず、ITの活用に関する上流工程のコンサルティング、運用支援も含めた包括的なソリューションの提供が求められる」と分析している。