NECと田中化学研究所、積水化学工業は10月1日、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、鉄マンガン系正極を使った次世代リチウムイオン電池を開発したと発表した。

詳細は、10月7日より大阪国際会議場にて開催される「第54回電池討論会」にて発表される予定。

今回開発された次世代リチウムイオン電池は、現在実用化されているマンガンスピネル系正極を使ったリチウムイオン電池の約1.7倍となるエネルギー密度271Wh/kgを実現している。これにより、リチウムイオン電池の低コスト化、環境対応自動車のさらなる航続距離延伸、定置用蓄電システムの小型軽量化などに寄与するとしている。

具体的には、層状岩塩構造を有するリチウム鉄ニッケルマンガン酸化物を新たに開発した。原料に安価な炭酸リチウムを使用する独自の合成手法を確立し、kgスケールの合成に成功した。同正極材料により、従来使われているマンガンスピネル正極材料(容量110mAh/g)の約2.2倍となる容量密度247mAh/gを実証した。

また、開発した新規鉄マンガン系正極の性能を十分に引き出す負極として、導電剤に炭素系材料のカーボンナノホーンなどを使用した酸化シリコン系負極を新たに開発した。鉄系酸化物正極に合わせて組成を最適化しており、電池の高エネルギー密度化に寄与するという。さらに、NECと積水化学工業が共同で、高電圧耐性の高いフッ素化エーテルを含有する電解液も新たに開発した。これにより、鉄マンガン系正極を使ったリチウムイオン電池を最高4.5Vまで充電し、安定動作できることを確認した。

NECは、開発した鉄マンガン系正極、酸化シリコン系負極、耐高電圧電解液を使って、8Ah級のラミネートセルを試作した。試作品により、現在実用化されているマンガンスピネル系正極を使用したリチウムイオン電池の約1.7倍となるエネルギー密度271Wh/kgを実証したという。

今後、3社は同リチウムイオン電池の信頼性、安全性などの課題解決に注力し、2020年頃の実用化を目指して研究開発に取り組んでいくとコメントしている。