三浦アケミ氏

路地のあちこちから秋刀魚(サンマ)を焼く匂いが立ちのぼる季節になりました。サンマやサバなど秋を代表する魚には、おいしさだけでなく健康と美容成分がたっぷりだとか。「おさかなマイスター」三浦アケミさんに旬の秋の魚とのおいしい付き合い方を聞きました。

新鮮な一尾を見分ける「目」「腹」「エラの中」

――秋のサンマ(秋刀魚)は本当においしいですよね

「やはり秋の味覚と言ったらサンマです。塩焼き、刺身、煮物など様々な食べ方があり、旬のものは脂がのっていてどんな食べ方をしても本当においしいです」

――ほかに秋においしい魚と言うとなんでしょうか?

「まずサバ(鯖)ですね。今年は漁獲量も多いうえ、脂ののりもいいんです。値段もお手頃ですし、血液がサラサラになったり、生活習慣病の予防などに効果があるとされるDHAやEPAがたくさん含まれている。是非召し上がってほしいですね。

また、サケ(鮭)も旬です。私は会社で魚卵の販売を担当しておりますので、イクラとその親のサケには格別の思い入れがあり、ぜひお勧めしたいですね。サケは焼いただけでもご飯のおかずにぴったりですし、ちょっとお洒落にムニエルにしても美味と、万能のお魚です。

それから少し通っぽい魚ですが、シンコ(新子)もオススメ。東京湾で9月頃から獲れ始めるコハダ(小肌)の幼魚です。お寿司屋さんでも『新子あります!』という貼紙が出るのも今の時期だけ。シンコは握りでご賞味いただきたい逸品です」

――旬の魚ならなおさら鮮度が命だと思いますが、新鮮な魚の見分け方を教えてください

「まず一尾ものの場合ですが、青魚(イワシ、サバ、サンマ、アジなど)も白身魚(タイ、ヒラメ、メバルなど)も目を見てください。新鮮な魚は目が澄んでキラキラしています。白く曇った目や血が走ったような目の魚は、鮮度が落ちていると思われます。またお腹の尻尾近くにある肛門に汁や内蔵がにじんでいるような魚も、鮮度が落ちている証拠です。

もしも触れることができる状態であれば、指でエラをめくって中を覗いてみてください。内側が鮮やかな赤色をしていれば鮮度がよく、時間が経つに従って黒っぽく、さらに白っぽくなっています。

切り身の場合は、血合いが鮮やかな赤なのを選ぶとよいでしょう。茶色がかっていたり黒くなっていたりしたら、切ってから時間が経っています。パック売りしている切り身の場合、水分(魚から出たドリップ)や血がたまっているものは鮮度が落ちていると思ってよいでしょう。

魚は切り身にして空気に触れると味が落ちていきます。なので、お刺身の場合はできるだけサク(柵)で買うことがお勧め。サクでも盛りつけられたお刺身でも、切った角がピンと張ったものほど新鮮ですので、これも覚えておいてください。時間が経つほど身が柔らかくなってヨレヨレになってしまいます。

そうそう、干物も鮮度が大切なんですよ。干物は日持ちすると思われがちですが、時間が経つと魚の脂が酸化して味が落ちます。黄色く変色していたら酸化が進んでいると疑ってください」

オーブントースターで焼き魚、残ったお刺身は振りかけに

――買うならやっぱりスーパーより魚屋さんなのでしょうか?

「どちらがよいということは一概に言えません。ご自分の生活スタイルに合ったお店で買えばよいのではないでしょうか。昔ながらの魚屋さんは注文に応じてさばいてくれたり融通がききますが、最近はスーパーでも選んだ魚を切り身やお刺身にしてくれたりするところが増えていますので、ずいぶん便利になりましたよね」

――保存法はどうでしょう? 新鮮さを長持ちさせる技とかあるのでしょうか?

「一尾ものであれば内蔵を取り、二枚おろしや三枚おろしにしますが、そのとき血をきれいに落とすことが大切です。血は臭みのもとになったり雑菌が繁殖しやすいので、必ずきれいにふきとりましょう。切り身であれば漬け魚にしたり、調理してから冷凍保存というのがセオリーです」

――例えば、食べ残したお刺身は捨てるしかないでしょうか?

「食べ残しのお刺身は醤油漬やカラ揚げにするのが一般的ですね。少量なら、私はゴマと一緒にフライパンで細かくなるまで煎って、ふりかけを作ります。日持ちしますし、おかずの足りないときに重宝します」

――では、食中毒を防ぐために絶対にしてはいけないことは?

「当り前ですが常温での放置ですね。冷凍すべきものは冷凍庫に、そうでないものは冷蔵庫に早めにしまいましょう」

――煙が出るからと敬遠されがちな焼き魚。手軽に魚を焼く方法はないのでしょうか?

「魚グリルの後始末は私も面倒で魚を焼くのをためらいます。フライパンでクッキングシートを使って焼くのが手軽な方法ですが、もう少し横着するならアルミホイルで魚全体をしっかりと巻いて、オーブントースターで約10分焼くと、おいしい焼き魚ができますよ」

――三浦さんがおさかなマイスターの資格を取られた理由は?

「水産卸の会社で営業職をしているので、得意先との会話とかの中で使えるよう、扱い商品や付随する水産物の知識をより深めたいと思ったんです。資格取得を目指されるのはやはり仕事絡みの方が多いようですが、最近ではアナウンサーや釣り師の方などもチャレンジしていると聞いていますよ。

資格を取得するため『日本おさかなマイスター協会』の講座を受講しました。魚介類に関する知識はもちろん、水産加工品や栄養学、食品衛生などについて幅広く学びます」

――栄養学や食品衛生についても学べるんですね! では、魚を栄養学的に語ると?

「魚は栄養学的に満点な食材です。頭から内蔵、ヒレ、皮、血合まですべてを食べることができますし、タンパク質はもちろん、DHAやEPAも豊富。血合いには貧血予防に効果のあるビタミンと鉄分がたくさん含まれています。また、ヒレには女性には嬉しいコラーゲンがたっぷり……言うことなしです。

栄養的な面ばかりでなく、魚はお正月など折々の儀式などにも深く関わっていますよね。食が欧米化していく中で、日本の誇るべき文化である魚食文化を、後世にしっかりと伝えていきたいと思っています」

profile
三浦アケミ(みうらあけみ)
日本おさかなマイスター協会認定「おさかなマイスター」。築地場外にある水産卸売り会社「中外食品」にて主に魚卵の販売を担当している。