山梨大学は9月26日、花粉症やぜんそく、じんましんなどが夜間や明け方に悪くなる仕組みを解明したことを発表した。

同成果は、同大大学院医学学域基礎医学系(免疫学)の中村勇規 助教、中尾篤人 教授らによるもの。詳細は米国アレルギー臨床免疫学会誌「(The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に掲載された。

これまでの一般的な経験から花粉症やぜんそく、じんましんといったアレルギー疾患は、1日のある特定の時間帯に症状が悪くなることが知られている。例えば、花粉症では、鼻づまり、くしゃみ、鼻水などの症状は明け方に悪くなる「モーニングアタック」と呼ばれる状態になることが知られている。しかし、花粉自体の飛散は日中が最も多くなることから、花粉量だけで、こうした現象を説明することができず、そうしたアレルギー疾患に特有な時間依存的症状に関する仕組みはこれまで謎となっていた。

これまでの研究から研究グループでは、花粉症やぜんそくを引き起こす中心的な免疫細胞であるマスト細胞が、自分自身の時刻を定める時計タンパク質を持っていることを見出しており、今回の研究では、そのマスト細胞の時計タンパク質が花粉症などのアレルギー疾患にどのように作用しているのかの解明が行われた。

その結果、マスト細胞は、花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因物質)に自身が反応する強さをこの時計タンパク質を使って時間によって調節が行われ、時間帯によってアレルギー疾患の症状の強さが変化することを突き止めたという。

今回の成果について中尾教授は、マスト細胞の時間を制御することでアレルギーの予防や治療に応用できるようになり、例えば、マスト細胞の時間を夜から昼に変えてしまえば、夜間のアレルギー症状の悪化が防げるといった薬の開発も可能となる。これまでの花粉症などのアレルギー治療薬とはまったく異なるコンセプトに基づく薬が作れるようになることが期待されるとコメントしている。