「2014 ANAワインセレクション」は2日かけて行う。右奥の男性が、マスター・オブ・ワインのネッド・グッドウィン氏

ANAの機内ワインは毎年3月に一新する。前年の5月に選定方針を定め、約半年かけてワインを決めるのだが、その選定方法にANA独自のスタイルがあるという。またそこには、ソムリエの資格をもつ客室乗務員(以下、CA)の存在も! ANAのワイン事情をうかがってみることにした。

2014年は約2,000種のワインがエントリー

9月20日に行われた「2014 ANAワインセレクション」の会場では、書類審査を通過したワインが、ラベルを覆った状態でずらりと並べられていた。それらをANA機内ワインアドバイザー・井上勝仁シニアソムリエや、ネッド・グッドウィン氏(マスター・オブ・ワイン)がテイスティングするのだが、メンバーは両氏だけではない。ソムリエ資格を持つCAや機内食を担当するANAケータリングサービスのシェフ、そしてインターネットショッピングなどのサービスを企画するANAグループ社員など、計20名ほどの人がブラインドテイスティングを行っていた。中にはワインビギナーの人もいるという。

「こうしたスタイルで選考会を行うのは、もう10年ほど前からです」と話してくださったのは、自身もワインアドバイザーである全日本商事の有井努さん。選定方針を定めた後は、6月中旬に各メーカーへ募集をかけ、7月末に書類審査を実施。9月中旬に最終審査であるワインセレクションを行い、高得点を取ったワインが翌年の3月よりサービスされる。

銘柄や産地が分からないよう、ラベルが覆われている

銘柄ごとに点数が重ならないようにして、10点満点で採点する

機内ワインに関しては、今年は世界中から約160社・1,950種類ものワインのエントリーがあり、その中から最終審査に進んだのは288種類。そこから28種類に絞られる。また、ラウンジワインは約30社・120種類のエントリーから56種類へ、そして最終的に13種類がラウンジに用意されることになる。

プロだけでなくみんなで選ぶ

また、ワインの選定方針は機内という環境を加味しながら、各クラス別に設けられている。例えば、澱(おり)が強くならないようにボルドーワインは比較的若めのものにする、また、ファーストクラスでのひとつは、高級ワインを多く産出するボルドーのメドック地区限定で募集する、などということもある。ちなみに、機内のワインはメーカーから日本にまとめて輸出されるのではなく、直接飛行機が各国のワインを受け取っているそうだ。

最終審査であるワインセレクションでは、井上氏とネッド氏は毎年テイスティングを行っているが、それ以外のメンバーは基本的に毎年変わる。「プロが好む味だけでは、セレクションが単調になることもあるかもしれません。ふだんはあまりワインを飲まないお客様にも喜んでもらえるワインをサービスできるように、お客様と同じ目線でワインを判断できるメンバーも加えています」(ANAの商品戦略部・WILLA TOさん)。

一つひとつの香りや味わいの違いを比べながら、至極の1本を選ぶ

国際線では1,2割がソムリエCA

「どれも自信を持って薦められると思います」とソムリエCAの岡村歩さん

そのメンバーの中には、ソムリエの資格をもつCAもいる。資格を有する全員がソムリエバッジを付けて乗務しているわけではないので、一見してどのCAがソムリエの資格を持っているのかは判断できないが、ANAの国際線では約1,2割程度がソムリエCAだという。ソムリエの資格取得は義務ではないものの、乗客にサービスをする以上、その知識やスキルを磨きたいというCAは多い。

テイスティングを行っていたCAの岡村歩さんに話を伺ったところ、ソムリエの資格を取得したのは3年前とのこと。「お客様に一番近いところで業務をしている人間として、お客様に喜んでもらえるワインを選ぶことは、とても重要なことだと思っています。このセレクションに参加したいと希望を出すCAもいるくらいです」という。

機内は乾燥している場合が多いため、通常よりもワインの渋みや酸味を感じやすくなる。しかし、今日ではボーイング787のように、乾燥対策が施された機体もあるので、テイスティングでは地上で飲んでもおいしいワインを選ぶ、ということを心がけているという。

ANAの2014年の試みとしては、「新しいワインにチャレンジ」(ANAの商品戦略部・WILLA TOさん)とのこと。実際、ボルドーやブルゴーニュのみならず、アメリカや多品種多国籍、また、日本などとジャンルを設けてワインの選定が行われていた。どのワインが2014年 ANAワインセレクションとして来年3月に登場するか、是非楽しみにしていただきたい。その際、機内では通常の3倍程度酔いが回りやすくなるので、飲みすぎにはご注意を。