京都大学は9月20日、関節リウマチの関節炎に存在する新たな種類のヘルパーT細胞を同定したと発表した。

成果は、京大医学研究科の吉富啓之特定准教授(次世代免疫制御を目指す創薬医学融合拠点)、同・小林志緒研究員、同・整形外科学講座の松田秀一教授、同・耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座の伊藤壽一教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米国東部時間9月10日付けで米リウマチ学会誌「Arthritis & Rheumatism」オンライン速報版に掲載された。

関節リウマチは「炎症性サイトカイン」(細胞間でやり取りされる多様な生理活性を持つタンパク質の1種)を抑える治療により飛躍的に治療成績が改善したが、関節リウマチの病態がまだ十分にわかっていないこともあり、それらの治療が十分に効かない患者も存在している。

関節リウマチの病態にはT細胞も関係していることがさまざまな研究により知られていたが、どのように関わっているのかは十分にわかっていない。動物モデルの研究では、「Th1」や「Th17」といったヘルパーT細胞が関節炎に関係していると考えられていたが、関節リウマチの患者の病態はこれらの細胞群だけでは十分に説明できていなかった。そこで研究チームは今回、別種のT細胞が関節リウマチに関わっているのではないかと考察し、研究を進めたのである。

関節リウマチは「滑膜」組織が増大することで関節の軟骨や骨が変性に至る。リウマチ滑膜組織にはリンパ球が集まる「リンパ濾胞」という構造が認められるため、リンパ濾胞の形成に関係する「CXCL13」の発現を確認したところ、従来はリンパ球ではなく間葉系細胞が作るとされたCXCL13が、リウマチ滑膜組織では主にヘルパーT細胞から産生されていることが判明した。

次に、これまで知られていたヘルパーT細胞であるTh1、「Th2」、Th17、「Treg」、「Tfh」とCXCL13産生T細胞との関係が調べられ、その結果、どの細胞群とも異なる新たな種類のヘルパーT細胞であることが確認されたのである(画像1)。

また炎症性サイトカイン(「TNFα」および「インターロイキン(IL)-6」)がCXCL13の持続的な産生やCXCL13産生ヘルパーT細胞の分化に関与していることも判明。このことから、新たな細胞群を「炎症性CXCL13産生ヘルパーT細胞(iTh13)」と名付けられた。iTh13細胞は何らかの炎症が生じた時に、炎症局所に誘導されCXCL13を持続的に産生することで、ほかのリンパ球を集めてリンパ濾胞をその場に作る役割があると考えられている(画像2)。

画像1(左):今回のiTh13細胞はこれまで知られていないヘルパーT細胞だった。画像2:iTh13細胞の働き。iTh13細胞は炎症部位で誘導され(左)、CXCL13によりほかのリンパ球を集めて(中央)、リンパ濾胞を炎症部位に形成する(右)働きを持つと考えられる

今回の成果は、ヒトのヘルパーT細胞に新たな種類のものが存在することを示した重要な発見だ。関節リウマチだけでなくほかの慢性炎症疾患やがんなどにおいても、iTh13細胞が重要な役割を果たすと考えられるという。iTh13細胞がどのように働くのかを明らかにすることで、免疫学の進歩だけでなくさまざまな疾患の新たな治療につながると考えているとしている。