田中貴金属グループの田中貴金属インターンナショナルと田中貴金属工業は9月26日、東南アジア諸国での基盤強化と将来的な販路拡大を目的に、共同でシンガポールに現地法人を設立し、2013年10月1日より稼働をはじめることを発表した。

近年、電子部品における鉛の使用が避けられるようになってきており、パワー半導体の薄電用接着剤として利用可能な鉛フリー対応の銀ペーストの需要がシンガポールで拡大しているが、銀ペーストはカスタマごとに使用条件が異なるため、材料の採用検討時にはサンプルの試作や評価、改良を繰り返す必要があり、日本の工場での対応では限界が近づきつつあったという。

シンガポールに対して田中貴金属グループではこれまでに、1978年に田中エレクトロニクス・シンガポールにボンディングワイヤの製造・販売拠点を設置したほか、2004年に田中貴金属インターナショナルがシンガポール支店を開設するなど、現地での販売活動を行ってきた。今回の現地法人設立は、そうした市場で必要となる販売強化ならびに、柔軟な組織運営を行うために判断されたもの。

また、現地法人には、銀ペーストの試作品の供給、評価、改良などを行うことが可能な研究ラボ「TANAKAマテリアル・ラボラトリ・シンガポール」が設置され、銀ペーストのほか、磁気記録メディア用ターゲットや半導体用ボンディングワイヤ、電気接点材料などの貴金属製品を主力として、シンガポールおよび一部のマレーシアの現地顧客を対象とした研究開発支援や販売が行われ、将来的には東南アジア各国(ASEAN諸国)での販路拡大を目指すとしている。

なお、現地法人の社名は「田中貴金属(シンガポール)株式会社」で、資本金は200万ドル。出資比率は田中貴金属インターナショナルが70%、田中貴金属工業が30%を予定している。設備投資額は、研究ラボを含め85万ドルを予定しており、当面は従業員35名の体制で運営される予定で、田中貴金属では、営業および技術の両面で顧客に密着した活動を強化していくことで、2015年度に7億2000万ドルの売り上げを目指すとしている。

シンガポール法人の主力となる銀ペースト