鎧姿で刀を振りまわす侍。1860年前後の写真とされる

江戸時代の武芸学校で、侍クラス専用に使われていた教科書が、海外で翻訳・分析されて話題となっている。教科書には侍としてあるべき姿や、拳闘、フェンシングの“秘密”が書かれている。

1844年発行の「武芸の序」を翻訳、分析

話題となっている教科書は「武芸の序」と呼ばれており、発刊されたのは1844年(天保15年)。1982年に、槍術(そうじゅつ)や馬術、棒術などに関して書かれている「日本武道大系」の一部としてまとめらている。

今回、その「日本武道大系」にある「武芸の序」の部分が、ハンガリーのブダペストにある大学の日本学研究科に所属するサボー氏によって翻訳・分析され、論文として発表された。論文は「Acta Orientalia Academiae Scientiarum Hungaricae」に掲載されている。

教科書は、最古の日本柔術の流派とされている「竹之内流」を侍クラスの生徒たちが学ぶためのもの。古代中国の軍師による引用文も含まれており、教科書は漢文スタイルで書かれている。

侍が守るべきルールとは

中には、「恥ずべきことをしてはいけない」など、侍が遵守すべきルールに関する記述もあった。威厳の損失を防ぐ目的や、優れた武術の寡占は護身にもつながるという観点から「学校で学んだことを漏らしてはいけない」というルールも存在したようだ。

特筆すべきルールとして、「争ってはいけない」と「他の武芸学校の悪口を言ってはいけない」があった。サボー氏は「現代において、西洋人は『侍は日常的に戦っていた』という明確なイメージを持っているが、1844年の時点においては、決闘は許されていなかった」と、論文で触れている。

フェンシングや拳闘……「秘密のスキル」はあいまいに

教科書からは、生徒たちが学んだであろう「拳闘の深遠なる秘密」と「フェンシングの深遠なる秘密」の一端が垣間(かいま)見えた。

サボー氏によれば、拳闘の部分にはパワフルな「神聖な技術」(divine techniques)が書かれており、フェンシング技術の秘密は一子相伝とされているという。万一、侍以外の大衆の手に教科書が渡っても、全容を理解できないように「秘密のスキル」の詳細な記述は控えられていたことに、同氏は「驚くべきことではない」と述べている。