大阪市立大学(大阪市大)は9月6日、福井県が進める「エネルギー研究開発拠点化計画」の取り組みの1つとして、「スリット式防波堤を利用した波力発電」の実証試験の実施可能性を検証することを目的に、関西電力と共同で調査を開始したことを発表した。

スリット式防波堤を利用した波力発電は、スリット式防波堤内部の遊水室に水車を設置し、波がスリットを通過する時の速い流れを利用して水車を駆動し発電しようというもの。波の運動エネルギーを利用する波力発電の1種で、防波堤に打ち寄せる波が、スリットを通過して周期的に遊水室に流入・流出することを利用して、そのエネルギーの回収利用が期待されている。

今回の可能性調査は、実際の防波堤における波の特性を詳細に把握し、水車の最適化研究開発に向けて実施されるもので、これにより、その防波堤における波の特性にあった水車形状を明らかにできるようになることが期待できるという。

防波堤に設置される波力発電は、1基あたりの発電出力は海上設置型に比べ小さくなるが、既存のスリット式防波堤へ設置できることによる設置コストの抑制や、船舶航行や漁場操業などに影響を与えない点などの利点があるほか、メンテナンス面でのフレキシビリティなども期待される。

今回、実際に調査が行われるのは、港外側がスリット構造になっている敦賀港鞠山地区防波堤で、波がスリットを通過するときの流速、防波堤前面の波高など、波浪データの計側が行われる予定だ。

データ計側期間は、2013年9月5日から201年8月までを予定しており、計測されたデータならびに国土交通省が公表している波浪データを用いることで、今後、波力発電のシミュレーションによる理論検証、ならびに水車の設計などが行われていく予定だという。

左:スリット式防波堤の概要。スリット形状の開口部を持ち、その内部に空洞の遊泳室を設けることで、打ち寄せる波を消波・エネルギーを減衰させる仕組み。中央が今回の波力発電システムの概要図で、右がその際に用いられることが検討されているサボニウム型水車。常に一方向に回転し、配置角度を任意に変えた多連結構造の組み合わせを取ることで、変換効率を高めることなどを目的とした調査が行われる