富士通は9月5日、スーパーコンピュータ「京」を用いた大規模磁化反転シミュレーション技術を開発し、永久磁石が磁化反転する過程をシミュレーションすることに成功したと発表した。

同技術を用いたネオジム磁石の磁化反転のシミュレーションは、物質・材料研究機構(NIMS)と共同で実行された。詳細は、北海道大学で開催された「第37回日本磁気学会学術講演会」において発表された。

近年、モータや発電機のような磁性材料を利用した機器の高効率化が省エネルギーへの機運の高まりとともに大きく注目されている。特に、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)のモータにはジスプロシウムなどの重レアアースを使用したネオジム磁石が採用されているが、資源問題などの観点から重レアアースを使用しない強力なネオジム磁石の開発が重要となっている。そのため、新たな磁性材料の作製に向けた、磁性材料の磁区構造を把握する技術が研究されてきた。

今回、新たに開発された技術を用いて、ネオジム磁石の磁化反転のシミュレーションが行われた。シミュレーションでは、ネオジム磁石の多結晶モデルを用い、計算領域を1nmの微細な領域に分割することで磁壁と呼ばれる磁化の遷移領域の挙動を計算した。これにより、これまでの技術では困難だった磁壁の移動や磁化反転が進行する様子を解析することができたという。

図1 多結晶モデル

図2 多結晶モデルの磁化反転のシミュレーション

なお研究グループでは今後、文部科学省の「元素戦略プロジェクト」における元素戦略磁性材料研究拠点と連携して、「京」による計算を継続して実施し、マイクロマグネティックス手法と第一原理計算による材料設計を融合したマルチスケール磁石シミュレータの開発に寄与していくとしている。