ケースレーインスツルメンツは8月28日、静電容量方式タッチスクリーンを搭載し、直感的なアイコンベースの操作を実現したベンチトップタイプのソースメータ(SMU)「2450型」を発表した。

同社は現在、計測を行うユーザーを取り巻く環境に以下の4つ変化が生じていると見ている。

  1. 製品開発サイクルの短縮
  2. コスト削減のためのテスト専任エンジニアの削減
  3. PC/スマートフォン(スマホ)世代の電気エンジニアが主流になってきた
  4. 今まで電気をまったく扱わなかった化学系エンジニアなども計測を行う必要が出てきた

こうした環境の変化により計測器にも新たなニーズが発生することとなった。その最たるものが「ユーザーインタフェース」の変革だという。スマートフォンなどのように、マニュアルを見なくても、直感的に操作し、必要な情報にたどり着くことができることが求められていたという。また、既存のSMUユーザーからも、機能が増えすぎて、前面パネルのボタン数が多い、メニューの階層数が多く、必要な機能にたどり着くまでに非常に労力を要する、といった点の解決が求められていたという。実際、同社の従来SMUも、ボタン数がデスクトップ機で28個、その内24個はシフトボタンで別の機能を持たせてあるほか、各機能にはメニューが階層式に用意されており、その機能数はあまりにも膨大すぎて、操作が面倒であるという課題があったという。

そこで、同社はそうした複雑な操作を、直感的に誰でも簡単に操作可能とし、結果として操作学習の時間を短縮しつつ、精密な測定を実現するという独自の設計哲学「Touch、Test、Invent」を新たに考案。今回の製品である2450型から、その思想を取り入れ設計・開発を行ったという。

ケースレーが提唱する新たな設計哲学の意味するところ

そうして開発された2450型は、ハーフラックサイズながら、電圧源、電流源、6.5桁のマルチメータ、電子負荷、トリガ・コントローラのほか、I-V測定システム、カーブトレーサ、半導体パラメータ・アナライザの機能を搭載しており、それらの測定結果を5型フルカラーモニタならびに、ネットワークで経由されたPCなどでチェックすることが可能。

ケースレーの新設計思想を取り入れたソースメータ(SMU)「2450型」。5型モニタに6.5桁のマルチメータと、かなり視認性は良い。右の画像の場合、上が電流、下が電圧と分かれているが、本当に分かれていて、下だけスワイプでグラフに切り替えたりできる。タッチスクリーンはマルチタッチに対応しており、ピンチインやピンチアウトも可能。複数指を用いた操作に関しては、ユーザーからのニーズ次第でさまざまな機能に対応する可能性があるという。ちなみにインタフェースが英語だが、将来的には日本語に対応する予定だという

各種の機能は、タッチスクリーン上のアイコンにタッチすることで起動するほか、良く使う機能を1タッチで呼び出すことが可能なクイックセット機能も搭載。また、状況に応じたヘルプ機能により、直感的な操作をスムーズに行うことを可能としている。

左の画像がクイックセット機能の画面。右が各種機能のアイコン画面。これをタッチすることで、各種機能が立ち上がる

前面パネルのタッチスクリーン以外の各種ボタンや端子。各画面からは「EXIT」、「MENU」、「HOME」などを押すことで、各種の画面に遷移する

さらに、電圧および電流レンジを従来品から拡張子、微細なレンジにも対応を可能とした。具体的には、電圧レンジが20mVレンジまで、電流レンジが10nAレンジまでそれぞれ対応可能となっており、これにより待機電流などの測定も可能としたほか、微小電流測定時の安定化までの時間も短くなっているため、測定時間の短縮が可能。この時間短縮はポイントごとに効くので、ポイント数が増えるごとにその差が大きくなり、既存の製品と比べて低電流レンジで最大15倍高速に安定化することが可能になっているという。

加えて、背面パネルに微小電流測定に良く用いられるコネクタであるトライアキシャルコネクタを標準で搭載。前面のバナナ端子と背面を状況に応じて使い分けることが可能となっているほか、測定データをUSB端子からダウンロードして利用することが可能なため、エラーログなどを同社のサポートに提出し、不具合特定の時間短縮などを実現することができるようになっているという。

背面パネル。トライアキシャルコネクタを標準で搭載しており、よりノイズの少ない状況で微小な電流の測定を行うことが可能となっている。この前面と背面の切り替えは前面パネルの「TERMINALS FRONT/REAR」を押すだけでできる

一方、ソフトウェア面でも、「KickStartソフトウェア」を活用することで、PCからの制御が可能になるほか、設定や測定、グラフ表示やデータ表示、Excel形式でのエクスポートなどを活用することが可能なほか、PCとの接続の自動化用にGPIB、USB、LANインタフェース、DB-9ピンコネクタを用意。さらに、TSP(Test Script Processor)により、あらかじめテストプログラム(スクリプト)を機器内に組み込んでおき、スタートコマンドを送るだけで、計測器内部で演算が行われ、必要なデータだけをPCに送るといったことも可能。また、TSP-Linkポートを用いて複数の計測器を組み合わせることで、最大32台までの多チャンネル測定を最大500ns未満で同期をとり、活用することが可能となっている。

加えて、同社の2400シリーズ向けに開発されたプログラムに対する完全互換を実現しているため、2400シリーズを持つユーザーは、置き換えて、すぐに利用することが可能になるという。この他、新機能「TriggerFlowシステム」の活用により、繰り返し測定や条件分岐などを最大255ステップまで、プログラムを作製しなくてもフロントのタッチパネル上で組むことが可能になった。

なお、同製品は即日受注・出荷を開始しており、価格は61万6000円(税別)、各種の測定装置への搭載などに向けたフロントのタッチパネルや各種ボタンを省略したバージョンも用意されており、こちらは57万8000円(同)となっている。国内では、太陽電池や2次電池、各種センサなどの分野を中心に販売を拡大していく計画とするほか、同社では、新設計思想を今後の製品に順次適用していくことで、さらなる使い勝手をユーザーに提供していきたいとしている。