俳優の佐藤浩市、森山未來、仲代達矢、阪本順治監督、原作者・福井晴敏が27日、都内にて行われた映画『人類資金』(10月19日公開)の完成報告会見に出席した。

50億円のレプリカを前に笑顔を見せる佐藤浩市(右)と森山未來

同作は、作家・福井晴敏の同名小説を原作に、阪本監督と福井が『亡国のイージス』以来、約8年ぶりにタッグを組んだ作品。旧日本軍の秘密資金である"M資金"を題材に、共同脚本で映像化に挑んだ。金融ブローカーをかたりM資金詐欺を繰り返してきた詐欺師・真舟雄一(佐藤浩市)の前に、謎の男・石優樹(森山未來)が現れる。50億円を報酬に、10兆円にものぼるM資金を盗み出すことを持ちかけられた真舟は、全世界を巻き込んだ前代未聞のマネーゲーム計画をたくらむ。

詐欺師・真舟を演じ、主演を務めた佐藤は、同作を「骨太なエンターテイメント」と表現。「M資金というものを題材にしていながら、エンターテイメントな作品にしようという作り手側の思いがあって、それにストレートに乗っかろうと思いました」と振り返り、「M資金詐欺を繰り返しながら、僕の役柄がM資金に対してどう思っているのか。お客さんの中でそういう背景は分からなくても、見ていて感じられるものがあるのではないかなと思います」と語った。

それぞれ写真左から阪本順治監督、森山未來、佐藤浩市、仲代達矢、福井晴敏

一方、謎の男・石優樹役の森山未來は、「お客さんの心に響くのか、それとも夢物語で切り捨てられるのか。どういう反応が出るか楽しみ」と観客の反応が気になる様子で、同作に「セリフの中にもあるんですが、今の世間が行き詰まっていると感じたり、限界を感じていたりするならば、そこから先の何か違う景色が見えるきっかけになる作品になれば」という思いを込めていた。また、国連本部での長いスピーチのシーンに触れ、「目の前にはニューヨークに住んでいるエキストラの人たち。自分のつたない英語と中にあるメッセージ、そして実際に国連の方々もエキストラ協力してもらったので、この人たちにどこまで伝わるのかなというのが、いちばんプレッシャーでした」と振り返った。

原作者の福井は、「経済を題材にしている映画なので、『半沢直樹』があと1年早く流行ってたらもうちょっと企画も進めやすかったのでは」と言いつつ、「今は経済系の話題でいい風が吹いているので、ぜひこの作品を大ヒットさせたい」とコメント。また、『半沢直樹』の原作者・池井戸潤と同じ、第44回江戸川乱歩賞を受賞していることにちなみ、「倍返ししたい」とヒットに期待を寄せた。一方、阪本監督は「観客に向けてというよりも日本の方々に向けて映画を作ったつもりです」と語り、「僕らがこの企画に手をつけなければ、一生これに至るような企画を作れなかっただろうという自負もあります」と仕上がりに自信をのぞかせた。

またこの日、同作が9月7日に開催される第11回アジア太平洋諸国ウラジオストック国際映画祭のスペシャルイベントに出品されることも発表。最後は、50億円のレプリカを前でフォトセッションが行われ、佐藤らは札束を手にしながら笑顔を見せていた。