広島大学(広大)、兵庫県立大学、北海道大学(北大)などの研究グループは、生物多様性が高い河川では、人のレジャー利用(釣り、水辺での遊びなど)が増加することを明らかにしたと発表した。

同成果は、広大サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの土居秀幸 テニュアトラック講師、兵庫県立大学環境人間学部の片野泉 准教授、北大大学院地球環境科学研究院の根岸淳二郎 准教授らによるもの。詳細は米国生態学会の科学誌「Ecosphere」オンライン版に掲載された。

近年、生物多様性の減少により、生態系が提供する食料供給や水の保持などの環境面における利益(サービス)の減少に加え、レジャーや観光などの場所の提供による文化的なサービスの減少が危ぶまれている。

特に、そうした文化的サービスは、高い経済価値を持っており、一例によると、生態系が提供するサービスの経済的価値の内、約40%を占めると言われている。

しかし、生物多様性や生息場所の構造など、各生態系が持つ特徴との関係はこれまで明らかにされていなかったという。

そこで研究グループは、今回、日本全国の109の1級河川すべてにおける、のべ約600万人の河川のレジャー利用に関する大規模データ(国土交通省による河川利用実態調査)の解析から、その関係性の調査を行った。

その結果、生物多様性(魚類の種数)が河川水辺のレジャー利用(釣りや水辺での遊び)を増加させること、河川の構造(護岸率、砂州、森林割合など)や水質(懸濁粒子量)、河川周辺の人口なども、河川のレジャー利用に影響を与えること、ならびにレジャーの種類(釣り、水辺での遊び、散歩、野球などのスポーツ)によって、影響を受ける要因が異なることなどを突き止め、河川の生物多様性、生態系の構造や状態など生態系のさまざまな特徴が、文化的サービスを決める要因になっていることを示すことに成功したという。

全国109河川における魚の種数と釣り人、水辺で遊ぶ人の関係

各種レジャーの種類を決める要因。○が付いている要因が最良のモデルで、有意な決定要因として選ばれた