東京シティガイドクラブ・深谷洋氏

渋谷ヒカリエ、東京スカイツリー、「街」になった東京駅。東京ではいま、次々と新名所や魅力のスポットが誕生し続けています。そんな東京の"旬"の魅力を120%味わうための目の付けどころを、東京シティガイド検定合格者たちで構成する「東京シティガイドクラブ」の深谷洋さんに聞きました。

東京駅スウィーツ行脚から銀座の路地裏散策まで楽しみ方はいろいろ

――東京には次々と新名所が誕生していますね。

「そうですね。ここ数年の間に、六本木の東京ミッドタウン、再開発された丸の内、渋谷ヒカリエ、東京スカイツリー、新しくなった東京駅など、数えきれないほどの新名所が誕生しています。

私たち東京シティガイドクラブの会員は、東京の町歩きを楽しみたい方、修学旅行生、外国観光客などに東京を案内するボランティア活動をしています。それぞれの目的に応じて、町歩きのコースやプランを設計することも多いです。

なので、東京の歴史・成り立ちに関する知識や名所旧跡に通じているだけでなく、東京の新しい名所やスポットも知っておかないとガイドができません。私は仕事をリタイアしており時間がとれますので、話題のスポットのほとんどに出かけています」

――あまり知られていないけど意外に面白い、そんなおすすめのスポットはありますか?

「話題の東京スカイツリーの中にもディープで面白いスポットはありますよ。千葉工業大学のキャンパスなんかいいですね。最新テクノロジーを駆使した産業用ロボットが見られて本物の迫力です。

いま東京の観光スポットとして一番人気なのがリニューアルされた東京駅前ですが、私は新丸ビルの7階から見渡した丸の内界隈の景色がお気に入り。それから皇居前の和田倉門から東京駅中央口までを結ぶ行幸通り、そして日本郵便の商業ビルKITTEの屋上庭園から望む風景も大好きです。

それから東京駅の構内に入って、たくさんのスウィーツ店を行脚するのも楽しいですし、130円の入場券で東海道、東北、上越新幹線のホームに入って新幹線の車両を見比べたり旅の気分に浸るのも一興。

銀座なら銀座六丁目の裏通りや金春小路など裏路地がいいですね。金春小路は、江戸時代に幕府直属の能役者だった金春家の屋敷があった場所で、その後花街となり、現在はバーやクラブ、料亭、居酒屋などが狭い路地にひしめいています。昼でも薄暗く風情があり、ディープな路地散策を堪能できます」

外国人が喜ぶデパ地下試食天国や100均ショップお土産探し

――外国人を案内することも多いと思いますが、彼らが喜ぶスポットは?

「まずは皇居や浜離宮、芝離宮など、日本庭園のある都会のオアシスのような場所が好まれますね。それから日本でしか見られないユニークなところ。たとえば裏原宿やキャットストリートといった若者ファッションの街と、すぐ近くにある荘厳な明治神宮の対比とかがすごく興味を持たれます。

デパ地下も人気が高いです。試食天国で、無料で日本の色々な食べ物を味わえますし、日本料理の数々が一同に介しているので、感嘆の声が上がります。百均ショップも解説付きで案内するととても喜ばれますよ。日本にしかない日用品が揃っているので、外国人の日本土産発見場所になっているんです。

外国人を案内しているととても新鮮な刺激を受けます。『鳥居とは何のためにあるんですか?』とか『お寺の屋根はなぜ大きいのか?』『なぜ日本は土葬でなく火葬なのか?』などなど。普段日本人が当り前に思っていることに根源的な質問をしてくるので、もっともっと日本を、そして東京を知らなきゃ、という思いにさせられます」

――シティガイドの仕事って面白そうですね

「会員は1,000名ほどおりますが、年齢性別を超えた仲間との交流は楽しいですね。ガイド活動以外に、会員同士で『土産品』『グルメ』『歴史散策』といったテーマごとにさまざまな研修グループを作って、さらにディープに東京を掘り下げたりして楽しんでいます」

――東京シティガイドクラブの会員になるには、シティガイド検定に合格する必要があるんですか?

「必ずしもそうではないんですが、現在はほぼ全員が検定合格者ですね。もちろん検定に合格してもクラブ会員にならない人も少なからずいます。働いている若い方はなかなかガイドをする時間の余裕がありませんから。旅行会社の社員や、観光タクシーの運転手さん、就職を目指す学生、外国人との付き合いの多い方なんかが多く検定を受けられているようです。

東京という都市は、本当に奥が深い。その歴史を知るだけで、いままで見ていた風景がまったく違って見えてきたりします。

たとえば若者の街の吉祥寺ですが、なぜ吉祥寺になったかと言えば、江戸時代の明暦の大火でいまの文京区にあった諏訪山吉祥寺が門前ごと消失し、現在の武蔵野市に集団で移住したからなんです。そんな成り立ちを知ると、東京にいままで以上の愛着が湧いてきます。

長い歴史を持ち、いまも変り続ける東京。東京についての知識を深めると、俄然東京という街が面白くなり、毎日の生活が新鮮になります。東京についてもっと知りたいと思えるなら、ぜひ東京シティガイド検定に挑戦してみてください」

profile
深谷洋(ふかやひろし)
東京シティガイド検定2003年合格。現在、NPO法人東京シティガイドクラブ理事。ほかに、小石川後楽園庭園ガイド(東京都庭園協会)、皇居東御苑ガイド(菊葉文化協会)、文京区英語ボランティアガイド、板橋区観光ボランティアガイドとしても活動している。板橋区在住。孫2人。1949年生まれ。