空の上ばかりではない! JALパイロットの知られざる地上勤務の実態とは?

フライトシミュレーターを操縦する、運航訓練部737訓練室・飛行訓練教官の日比野琢さん

客室乗務員とは違い、その姿を見かけることが少ないパイロット。操縦室にいる彼らの姿を、機内放送の声で想像することもあるかもしれないが、もちろん勤務は空の上ばかりではない。そこで今回、地上ではどんな仕事をしているのか、日本航空(以下、JAL)のパイロットに聞いてみた!

パイロットにもデスクワークがある

あまり知られていないのだが、パイロットの一部は、上空での安全を支える業務を兼任している。JALのパイロットは地上勤務に当たる際、約10の部署に分かれて業務に当たっている。実際に地上ではどのような仕事をしているのか、その一例を5名の現役パイロットに伺った。

パイロットが地上勤務するオフィスの1室

737機長の芝端秀浩さん(乗務歴23年)は運航技術部に所属。新造機の領収業務やテストフライト、運航関連規定の検証や改定を担当している。「部品のちょっとした取り付け具合の違いで操縦しにくくなるので、細かいチェックが必要です」と語る。

塚本裕司さん(777機長、乗務歴16年)は運航訓練審査企画部に所属し、運航乗務員や訓練生の教育体系の作成や企画・運営に携わっている。教材を作るのも仕事のひとつなのだ。同じく運航訓練審査企画部の松野伸一郎さん(787機長、乗務歴17年)は、運航訓練部787訓練室の飛行訓練教官を兼務。フライトシミュレーターを使ったパイロットの定期訓練や、機種移行訓練・審査の際に教官を務めている。

767機長の本郷猛さん(乗務歴17年)は運航安全推進部で、飛行データを分析することによって不安全要素を抽出し、その対策を検討。また、エラーを未然に防ぐための教育の企画・運営と情報発信を行っている。737機長の赤地秀夫さん(乗務歴16年)は顧客戦略部お客さまサポート室で、乗客からメールについて、質問には調査を行って返信し、意見などは運航現場にフィードバックしている。

芝端さん「同じ機種でも1機ごとにクセが異なるので、その機に合わせた調整が必要になります」

本郷さん「様々な運航情報を、全パイロット約1,500人に紙媒体を配布して情報共有しています」

赤地さん「お客さまから1日に100件超のメールがあり、意見やお叱りのほか、激励などのメールもあります」

その他、パイロットが地上勤務する部署は路線計画部、意識改革・人づくり推進部などがある。パイロットもデスクワークをしていると思うと、親しみを感じるというビジネスマンもいるのではないだろうか。

言語も含め、地上で技術を磨く

パイロットの技術としてイメージするものは、安全運航への姿勢・知識・操縦技術などだろう。しかし、状況を認識した上で判断し、コミュニケーションを構築して危機を回避する能力も求められている。こうした技術は、地上で養われているのだ。

中でもJALでは昨年度より、独自の訓練として言語技術教育を導入している。パイロットがなぜ言語教育?と思うかもしれないが、これは事象に対する認知・情報分析・考える・表現する力を向上させ、運航中の的確な情報伝達に役立てられているのだ。

具体的には、5W1Hを使用した質問への返答、国旗のイメージを言葉だけで伝える、絵画の分析など。私たちが飛行機に乗っている際、操縦室ではこうした訓練を経て鍛えられた言葉が行き交っていると思うと、ちょっと興味深い気がしてくる。

CBTルーム。約60台のPCでパイロットは各自、運航知識などを自主的に学ぶ

SPTルーム。写真は737機の紙製シミュレーター(通称:紙レーター)

また、社内の設備を使用して運航知識の向上も行っている。「CBTルーム」では、映像などの視聴覚教材を使って知識学習を実施。紙パネル製の模擬コクピットが設置された「SPTルーム」は、運航技術の維持や向上のために活用されている。

フライトシミュレーター737-800#01の内部

リアルな視界映像。操縦席の窓からはスカイツリーも!

2007年に導入された737-800#1(1号機)。この部屋は3階建てに相当するほどの高さで、他にもう1台設置されている

より大規模な訓練施設としては、フライトシミュレーターを使用。JALでは9台保有している。各機長は年4回、ここでトレーニングを行うのだが、どんな状況でも的確に対処できるように、様々なシチュエーションが設定されている。

例えば、悪天候時でもスムーズな離着陸を行う訓練。実際の航路を模して、その間に遭遇する出来事に操縦かんを握る2人でコミュニケーションをとりながら対処し、無事到着させる訓練。また、実際の運航で起こり得る様々な事象に対処する訓練も行っている。

もっと日常的なことでいうと、パイロットたちは自己のウエイトコントロールも必須となっている。ランニングやウォーキングなどで運動不足を補い、また、十分な睡眠やストレスをためないようにするなど、心身の健康管理に気を配っている。

パイロットの業務と言えば、世界の空をまたに駆けて……と想像してしまうが、その華やかな業務の裏には、こうしたきめ細やかなトレーニングや仲間の航路サポートなども行われているのだ。

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