Wind Riverは7月31日、同社が6月に発表した高パフォーマンスかつオープンソースのリアルタイムカーネル仮想化テクノロジ「Wind River Open Virtualization Profile(OVP)」を8月1日より提供開始することを明らかにした。

OVPは、同社のLinux(Wind River Linux)向けのアドオンソフトウェアプロファイルで、オープンソースのカーネルベース仮想技術(KVM)の最適化により開発されたものでリアルタイムディターミニスティックなKVMソリューションのメリットを、仮想マシン管理と商用組み込みLinuxのサポートとともに提供することを可能とする。

Network Functions Virtualization(NFV)向けソリューションであり、Intel VTと組み合わせることで、これまでネットワークアプライアンスで処理してきたアプリケーションなどを仮想化によるパフォーマンスの低下なしに、汎用サーバ上の仮想化環境で実現しようというもの。

従来の専用機器で賄ってきたネットワークの処理を、仮想化技術をベースにして安価な汎用サーバ上で実現しようという動きがでてきたが、その際にレイテンシなどがボトルネックとなっていた

具体的には、ハードウェアからやってくる信号をどの程度の低遅延で処理できるのかを分析し、リアルタイムパッチ対応にすることでレイテンシを抑制するといった「遅延対策」、Intelと協業してデバイス間を接続するソフトウェアを改良し、仮想化環境と同じレベルのスループットを実現した「仮想化スイッチ」、そしてOVPにクラウドのミドルウェアを統合することで利便性を増した「管理フレームワーク」の3つの部分を改良・改善することで、仮想化環境下における高速処理を実現したいという(2013年末から2014年頭にはOpenStackへの対応が図られる計画だという)。

詳細な値としては、従来の環境では、ネットワーク機器を用いた場合でインターネットレイテンシは2~10μs、これが従来どおりKVMを用いた場合平均14.7μs、ワーストケースでは800μs近くかかる場合もあり、サービスを開始できないというフラストレーションがかかっていたが、OVPを用いると、3~14μs程度、悪くても20μs程度で済むようになり、最大で74%の高速化が図れるようになることを同社では確認したとしている。

仮想化環境においてOVPを適用した場合(黄色)と適用しない場合(赤色)のレイテンシ比較

また、実際のパッケージ構成としてはWind River Linuxの上に載せるアドオンとして提供され、併せて別アドオンとして「キャリアグレードプロファイル」も提供されることとなる。これにより高可用性などを実現することが可能となり、OVPとの組み合わせるにより、キャリアグレードのハイパーバイザを実現できるようになると同社では説明する。

Wind River LinuxとOVPの概要

なお、OVPはさまざまなプロセッサアーキテクチャに対応しているWind River Linux上で動作するアドオンながら、2013年7月31日時点ではその機能をフルに活用するためにはIntel VTを搭載したプロセッサが必要であるとしている。