三角と棒の組み合わせた外観が目を引く「とよまつ紙ヒコーキ・タワー」

広島県東中部に位置する神石高原町(じんせきこうげんちょう)は、その名の通りに標高400~700mの高原にある。日本五大名峡のひとつに数えられる国定公園「帝釈峡(たいしゃくきょう)」など、多くの景勝地があることで知られているが、ここには紙ヒコーキのために作られたタワーがあるのだ。

競技としての紙ヒコーキも楽しめる場所

2003年に、「米見山山頂公園」の一角に建設された「とよまつ紙ヒコーキ・タワー」は、高さ26m・展望台15mで、恐らく世界唯一の紙ヒコーキを飛ばすことを目的に建設された施設。それを実現させたのは「折り紙ヒコーキ協会」会長の戸田拓夫さんである。「我々は紙ヒコーキを真面目に競技として行っている団体ですが、町中では『ゴミになる』などと嫌われているので、自由に飛ばせる場所を探しました」と言う。

競技にはいくつかルールがある。例えば、紙ヒコーキを作る紙のサイズは、距離競技の場合はA4、滞空時間競技の場合はA5が原則。また、紙を切ったりオモリを入れたり、やすりをかけることは禁止。のりづけも禁止されている。競技は数カ月置きに開催されているので、参加希望の人はwebサイトで最新情報を入手しよう。

タワーの上からは、窓を開けて東西南北に紙ヒコーキが飛ばせる

ちなみに戸田さんは、同協会の会長を務める一方、航空機部品等を製造する会社も経営している根っからの飛行機好き。そんな戸田さんが同協会を設立したのは1996年のこと。以来、日本のみならず海外でも「折り紙ヒコーキ教室」を開催するなどして紙ヒコーキの魅力を発信している。2012年には、ベトナムやアメリカ、香港を含む70カ所で同イベントを開催したというのだから驚きだ。

年に数回の紙ヒコーキの大会には全国から大勢の人が集まる

エレベーターも気流に配慮して設置

紙ヒコーキは誰でも一度や二度は、自分で作って飛ばした経験があると思うが、どれだけ風に乗せることができるかによって飛距離が違ってくるだけに、飛ばせる場所には制限がある。「協会がある福山市から車で1時間程度の範囲にある島や山を探して、風のおだやかな米見山に行き着きました」(戸田さん)。

建設費用は林野庁の助成金を使用している。「人口が100万人近くいる備後都市圏に、当時、親子で遊べる施設がなかったことに加え、山に人が足を運ぶことが山の保全に結びつくということから、米見山の魅力を増して人々が訪れることを促す施設だと認められたからだと思います」と戸田さんは説明する。

建物は紙ヒコーキの形を意識し、下は三角形でタワーはロケットの発射台をイメージしたものになっている。「空に飛び出す紙ヒコーキにふさわしいデザインにしました」(戸田さん)。タワーには老若男女が登れるようにエレベーターも設置されているが、気流を乱さないような太さにするのに気を遣ったという。

一口に「紙ヒコーキ」といっても多種多様な形がある

永遠の愛を「ラブコプター」でゲット!?

入場者は入場料300円を支払った際にエコ用紙を5枚渡される。そして、建物の1階に置かれた紙ヒコーキの折り方を紹介した図や戸田さんが紙ヒコーキの折り方を約100種類も取り上げた著書を見て、好きな紙ヒコーキを作り、15mの高さにある展望台に持って登る。

展望台は四方の窓が全て開けられるようになっており、そこから紙ヒコーキを飛ばすのだが、年に数回行われる飛行時間記録会のイベントでは、何と21分もの飛行時間を記録したものもあるという。こうした日常ではなかなか体験できない経験ができるので、マニアはもちろん、一般の親子連れも多いという。

記録更新を狙って試行錯誤するのももちろん楽しいが、タワーの展望室は360度の大パノラマで周囲には雄大な山々がそびえているので、他の参加者が紙ヒコーキを飛ばす様子を眺めるのも愉快だろう。

実は1万人目の入場者は沖縄県から来た人だったのだが、贈られた景品が沖縄旅行だったという笑えるオチもある(当選者は後日、その飛行機チケットを使って再訪したという)。そんなエピソードもあるタワーにドライブがてら行ってみてはいかがだろうか。

恋愛成就を叶える「ラブコプター」も用意

ちなみに、タワーがある広島県神石高原町は、2013年4月に「恋人の聖地」(2013年5月時点で全国に118カ所あるそう!)に選定されているので、デートで訪れるのもおすすめ。同じく高原町の観光名所として知られる「幸運仏堂」とコラボして作られた紙ヒコーキ「ラブコプター」を2人で飛ばせば、永遠の愛を手に入れることができるかも!?

●information
神石高原町観光協会