東京電力はこのほど、福島第1原子力発電所から放射性物質を含む汚染水が海へ流出した問題の公表が遅れたことについて、報告書を発表した。

同社は6月19日に、福島第1原子力発電所1、2号機タービン建屋東側の地下水から高濃度のトリチウムを検出したことを公表したが、港湾内への流出については22日まで認めていなかった。

報告書では、6月19日の段階で「港湾内への流出を裏付ける明確なデータはないものの、その可能性は十分高く、最悪の事態を想定して順次対策を講じる」と説明すべきであったと弁明。また、6月29日、7月7日に、海側により近い地点から高濃度汚染水が検出された時点で、港湾内に流出している確率が高いことについて記者会見などで言及すべきだったところ、明確なデータの存在にこだわり行われなかったほか、取締役会にも報告していなかったという。

公表が遅れた主な原因については、推測のみで流出の蓋然性を言及することによる影響や漁業への風評被害に対する懸念が社内全体にあり、リスクを積極的に伝える姿勢よりも、「最終的な拠り所となるデータや事実が出るまでは判断を保留すべき」との志向が優先されたことにあると説明した。

7月18日に、地下水位について原子力規制庁に報告したものの、公表が7月22日になった理由については、7月10日に、原子力規制委員会から地下水位変動と潮位変動の相関の有無について問題提起されたことを受けて、7月18日に観測孔内の水位について説明したが、その際、この相関が港湾内への流出を認める「最終的な拠り所」になり得ると判断した。

ただし、当該データを含む地下水位に関するデータについては、通常は原子力部門の別の箇所が業務目的で採取しているものであり、規制庁への説明者や記者会見の関係者は7月18日未明に情報を知ったばかりで、改めてデータの確認や整理を行う必要があったという。

また、当初は、7月22日以前に公表するべく準備を進めていたが、7月19日の段階では、既に実施中以外の対策も含めて説明できる資料の準備が間に合わず、週末の作業を経て、結果的に7月22日に公表することになったと釈明している。

今後の対策としては、放射性物質の濃度や放射線の線量率等を測定する場合は、計画段階から公表し、測定結果についても速やかに公表すると明記。汚染水については、港湾外も含めて早期にモニタリング観測点を増加し、監視を強化するとともに、薬液注入による地盤改良などの流出防止・抑制策を実施していくとしている。