全国から集まった老若男女1,300人による一斉田植え。壮観である

「田んぼアート」というものをご存知だろうか。全国で100カ所近くで実施されており、その元祖である青森県田舎館村(いなかだてむら)では田んぼへのお絵描き“田植え体験ツアー”も開催。1,300人もの人たちが作り出したカラフルで巨大なアート、“圧巻”のひと言に尽きるのだ!

7色9種類の稲苗で描かれたスターたち

今や“田んぼアートの村”としてすっかり有名になった青森県田舎館村。去る6月2日、“田植え体験ツアー”に全国から参加した1,300人もの植え手によって、広大な田んぼをキャンバスに1日がかりで巨大な絵が描かれていった。

緑、黄、紫、赤、白‥‥色違いの稲苗がアートの素材だ。その稲の種類は、黄稲(黄・古代米)、紫稲(紫・古代米)、観稲(濃緑・古代米)、つがるロマン(緑・青森県の奨励米)、ゆきあそび(白・新開発)、べにあそび(赤・新開発)、鑑賞用橙葉稲(オレンジ・新開発)、青系観178号(穂が赤茶・新開発)、青系観179号(穂が紫・新開発)。

第1田んぼに現れた「花魁とハリウッドスター」

以上7色9種の稲苗を“絵の具”にして今年描かれたのは、第1田んぼが「花魁とハリウッドスター(マリリン・モンロー)」、第2田んぼが「ウルトラマン」。第1田んぼは横143m×縦104m、第2田んぼは横80m×縦165mという広大さ。描かれた大迫力の花魁、マリリン・モンロー、ウルトラマンは「ここは本当に田んぼなのか!?」と思ってしまうほど、芸術的な空間となっている。

第2田んぼに描かれたのはお馴染みの「ウルトラマン」

「絵柄は、田舎館村むらおこし推進協議会の協議で決定されます。それを受けて村在住で養護学校美術教師である山本篤さんがデザイン化します」(田舎館村役場企画観光課・福地香織さん)。このデザインに従って、植え手が田んぼの指定箇所に該当する稲苗を丹念に植え込んでいくわけである。

昨年の入場収入は3,500万円も

田舎館村には弥生時代の垂柳遺跡があり、北方稲作文化発祥の地とも言われている。そんな稲作文化を今に伝えるために、昔ながらの手作業で田植えから稲刈りまでを行い、米づくりの楽しさを味わってもらおうと始まった稲作体験ツアー。この村おこしイベントが発展して、2005年より現在のような田んぼに絵を描く試みが始まった。

平成19年作品「神奈川沖浪裏と赤富士」

こうして始まった試みは「田んぼアート」の名のもとに、その後全国の稲作地帯に広がったが、やはり元祖である田舎館村の人気は抜群で、毎年10万人以上の観光客が訪れるほど。会場が2会場に増えると同時に募金制から入場料制に変わった昨年には、なんと3,500万円ほどの入場料収入を記録したそうである。

平成21年作品「戦国武将とナポレオン」

見学会場となる展望台は、役場や道の駅内に設置されている。そのため、「田んぼアート」目当てに村を訪れた人たちは、見学ついでに地場産の食を味わったり旬なイベント情報を仕入れたりと、その周辺地域の魅力や味わいも一緒に楽しむことができるようになっている。

第2会場の「弥生の里展望所」

期間中は「田んぼアート駅」も開業

今年も10月14日まで、田舎館村の田んぼアート鑑賞を楽しむことができる。第1田んぼアートの見学会場は、田舎館村展望台(役場6階展望台)、第2田んぼアートの見学会場は、弥生の里展望所(道の駅いなかだて内)となる。つまり、高所から俯瞰(ふかん)で楽しむことができるのだ。料金は大人の場合、第1・第2田んぼアート見学会場共通券300円、個別券は各200円、小人(小学生)は共通券100円となっている。

平成23年作品「竹取物語」

会期中は、ふたつの会場を結ぶシャトルワゴン車が運行される他、7月27日には弘前鉄道弘南線に臨時の「田んぼアート駅」も開業する。また、車で訪れる人は、田舎館村役場駐車場、道の駅いなかだて「弥生の里」駐車場を利用できる。

ちなみに、道の駅いなかだて「弥生の里」には、地元の食材を使ったメニューがそろうレストランもあるので、観賞後には食事も楽しんでほしい。「田んぼアート」を堪能したあとに地域の田んぼで育った米をいただく、これまた一興ではないだろうか。

平成24年作品「悲母観音と不動明王」

「北のまほろば」とも言われる本州最北端の地・青森県。この地に育まれる壮大な稲作アートに、是非心躍らせていただきたい。