慶応義塾大学(慶応大)は7月16日、センサなどを身につけることなく、電波を用いて人の転倒・転落を検出するシステムを開発したと発表した。

成果は、同大 理工学部 情報工学科の大槻知明教らによるもの。詳細は7月17 日~19日にアクトシティ浜松で開催される電子情報通信学会 知的環境とセンサーネットワーク研究会、9月8日~11日にロンドンで開催される「IEEE International Symposium on Personal, Indoor, Mobile and Radio Communications(PIMRC2013)」にて発表される。

厚生労働省の平成22年度版の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者が、ほぼ寝たきりである要介護となる直接原因の約1割が骨折・転倒によるものだという。また、1年間に高齢者の5人に1人が転倒を経験している。転倒を速やかに検出することは、生命や後遺症の観点からとても重要と言える。これまでにセンサを身につけるシステムや監視カメラを用いたシステムがあったが、装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担などが問題となっていた。

研究グループでは、電波を用いた行動識別の研究を行っており、研究室で開発した、電波を用いた「行動・状態識別センサ(アレイセンサ)」と、車のスピードや球速を計測する際に用いられている「ドップラーレーダ」を用いた転倒・転落監視システムを開発。それらのセンサにより、空間の電波の伝わり方の変化と、転倒・転落によるドップラーシフトをそれぞれ検出することで、センサなどを身につけることなく、人の転倒・転落を検出することができるようになったという。センサから直接見える場所での転倒を95%以上、物陰など直接は見えないところでの転倒も85%以上の確率で検出することに成功した。開発した転倒・転落監視システムは、アレイセンサ単独で構成することも可能という。

今回、開発した電波を用いた転倒・転落監視システムによって、センサ装着などの心理的負担なしに、高齢者などの見守りが可能になる。研究グループは実用化に向けて、今年度、住友電気工業と共同で、開発したシステムの有効性について検証していくとコメントしている。

転倒によるドップラーシフトの変化(ドップラーレーダ出力)

転倒による伝搬の変化(アレイセンサ出力)