「ベアレンクラシック」。330ml×12本セットで4,100円

冷たいビールがますますうまくなる季節。きりっと冷えた一杯のビールは、一日の疲れを癒やしてくれるものだ。東北の各地にはそんなビール好きにはたまらない個性豊かな地ビールがいっぱい。劇団が経営する醸造所から生まれた桜酵母の香り高いビールから、ポリフェノールたっぷりの秋田美人のビールまでずらりである。

ホップの産地・岩手に伝わるドイツのビール醸造技術

東北の地ビールと言えば、真っ先に思い出すのが岩手県の「銀河高原ビール」。東北の、というより全国的に有名な地ビールで、現在では全国各地の飲食店で味わえたり購入できたりする。既に全国区となった銀河高原ビールはさておいて、東北には他にもたくさんの地ビールがある。東北は北海道と並ぶホップの一大産地であり、加えて清らかな名水も多く、ビールの里として十分すぎる条件がそろっているのだ。

ホップ生産量全国一を誇るのは岩手県遠野市。ここには、「遠野麦酒」の「ZUMONA(ずもな)」というローカル色たっぷりの地ビールがある。遠野といえば『遠野物語』で有名な民話の里としても知られるが、その民話には「むかしむかしあったずもな」という定番の言い方がある。「~だそうだ」を意味する方言「ずもな」を商品名としたビールだ。

遠野麦酒「ZUMONA」ビール。各商品(330ml)とも1本420円

地元のFM局には「遠野ずもなFM」という番組があり、遠野市ホームページには「今日あったずもな」という広報ブログまである。「ずもな」は遠野ではずいぶんポピュラーな言葉らしい。

製造は清酒を造って200年という老舗の上閉伊酒造。「南部杜氏の技術を生かしながらも、ビール造りには初心者であることを常に忘れずにビールを造っております」と謙虚だが、ビールはドイツ風の本格派で、「ZUMONA/ヴァイツェン」や「ZUMONA/ヴァイツェン」は遠野産のホップを使ったこはく色のキレのよい逸品である。

豊かな自然に囲まれた岩手県のベアレン醸造所

同じ岩手県盛岡市の「ベアレン」ビールは、ドイツから移設した醸造設備を使ったヨーロッパ伝統のクラシックビール。ブラウマイスター(ビール醸造職人)を務めるのはビールの本場ドイツの職人という本格派で、原料の麦芽もドイツから直接購入というこだわりぶり。「ベアレン」とはドイツ語の「熊」の意味である。

秋田は桜酵母やポリフェノールと「美」がコンセプト

ほのかに赤みを帯びた「さくら 桜天然酵母ビール」(330ml) 498円

岩手県に続いては秋田県。仙北市の「田沢湖ビール」は、劇団「わらび座」を母体とする株式会社わらび座が製造販売している異色の地ビールだ。

「わらび座」は民族伝統をベースにした現代的な舞台作品を全国公演している劇団。「わらび劇場」「たざわこ芸術村」などの文化活動も積極的に行っているが、「新しい文化の創造」の一環として、地ビールの製造販売を行っているのだという。

1997年、秋田県の地ビール第1号として「田沢湖ビール」を発売したが、ビールを発酵・醸造するための主役である酵母を一切ろ過しない本格派ビールとして評判になった。最近では、日本で初めて桜の花から採取した天然の桜酵母を使用した、「さくら 桜天然酵母ビール」の人気が高い。華やかな春の香りが楽しめる。

秋田市には、市街地に小さな醸造所を構える「あくらビール」がある。ここの商品は「なまはげボック」や「秋田美人のビール」などとネーミングに趣があるが、「秋田美人のビール」はコラーゲンの維持のために大切なポリフェノールを残存させる醸造法で造られたビールなのだそう。「美人」の名を付けているのも、あながち根拠のないことではない。

左から「なまはげボック」「秋田美人のビール」「さくら酵母ウィート」。いずれも330ml525円

名水を生かした青森の地ビール

豊かな名水を使ったビールもある。美しい渓流で名高い青森県の奥入瀬。十和田市の十和田湖ふるさと活性化公社の醸造する「奥入瀬ビール」は、「奥入瀬の源流水から生まれた地ビール」がキャッチフレーズで、十和田湖や奥入瀬渓流の観光客に大人気である。

奥入瀬ビール。左から「ヴァイツェン」「ダークラガー」「ハーフ&ハーフ」「ピルスナー」。各300mlグラス441円(奥入瀬麦酒館)

確かに、地ビールはおしなべて値段が高い。少量生産ゆえの宿命だが、そのこだわり抜いた手作り感は大量生産のビールや発泡酒などでは味わえない趣の一杯が楽しめる。おいしいものを求めて東北を旅する折には、是非東北の地ビールをゆっくり堪能してみてはいかがだろう。

●Information
奥入瀬麦酒館