東北大学は7月1日、これまで原因不明とされていた大動脈の硬化に伴う脳梗塞の発症メカニズムの解明に成功したと発表した。

同成果は、同大大学院医学系研究科中心血圧研究寄附講座の橋本潤一郎 准教授と、腎・高血圧・内分泌学分野 の伊藤貞嘉 教授らによるもの。詳細は米国心臓協会雑誌「Hypertension」に掲載された。

脳内の太い動脈が閉塞して起こる脳梗塞は、脳主幹動脈や頸動脈内の粥腫(動脈硬化性プラーク)、心房内の血栓などを基盤として発症することが知られているが、そうした原因を伴わずに発症する場合も多くあり、原因不明脳梗塞と診断される場合も少なくない。

今回、研究グループは、高血圧患者を対象に胸部下行大動脈の血流波形を非侵襲的な方法で記録し、心臓の拡張期に下行大動脈から頸動脈へ向かって血液が逆行性に流出する現象を確認したほか、大動脈が硬化するにしたがってこの逆流の比率が増加することを発見した。

この結果は、脳卒中患者の約20%に存在することが知られている脳梗塞の原因となりうる大動脈内の不安定なプラークが、大動脈内の逆流によって破綻・遊離し、頸動脈や脳内動脈に流出することで、「逆行性脳塞栓」を引き起こす能性を示すものだと研究グループでは説明しているほか、大動脈の血圧(中心血圧)のみならず、大動脈の血流(中心血流)が脳卒中の発症機序に重要な役割を果たす可能性があることが推測されるとコメントしている。

下行大動脈から頸動脈への逆行性の血液流出