北海道大学(北大)は、胃腸炎を引き起こすノロウイルスを特異的に捕捉することが可能な腸内細菌が存在することを証明したと発表した。

同成果は、同大の佐野大輔 准教授、同 三浦尚之 博士研究員らによるもの。詳細は「Journal of Virology」に掲載された。

ノロウイルスはヒトに対して嘔吐、下痢などの急性胃腸炎症状を起こすことが知られているが、その感染経路は完全には解明されたとは言えないことから、感染の拡大を防ぐ有効な手だては未だに構築できていないのが現状だ。

そこで研究グループは今回、ノロウイルスはある種の腸内細菌に結合した状態で人体内および環境中に存在するという仮説を立て、その「ノロウイルス吸着性ヒト腸内細菌」が存在することを証明する調査を行った。

具体的には、ノロウイルスが、人の血液型を決定する多糖(血液型決定抗原)に吸着することが知られていることを踏まえ、血液型決定抗原様物質の産生能力を手がかりに、腸内細菌を健常者の糞便から選り分け、単離した菌株(Enterobacter sp. SENG-6)に関し、ノロウイルス粒子との吸着能力評価、およびノロウイルス粒子吸着部位の探索を行ったという。

この結果、単離されたEnterobacter sp. SENG-6は、血液型決定抗原様物質を細胞外に分泌しており、そこにノロウイルス粒子が強く捕捉されることが確認されたという。

そのため、研究グループでは、この腸内細菌にノロウイルスを捕捉させることで、腸の細胞へのノロウイルス感染を抑制できる可能性があるとするほか、ノロウイルスを大量に含む下水を処理する際にも、ノロウイルスをこの腸内細菌に捕捉させた後で膜ろ過を行うことで、大きい口径を持つ膜であってもノロウイルスをこし取って除去することが可能となることが予想されるため、新たな水中ノロウイルス除去手法の確立につながることが期待されるとコメントしている。

白い球形粒子がEnterobacter sp. SENG-6が分泌した細胞外物質に吸着したノロウイルス粒子。細胞外物質に大量のノロウイルス粒子が結合していることが観察できる