岡山大学は、シャーレ上およびマウス生体内で象牙質を作る細胞(象牙芽細胞)の樹立に成功したと発表した。

同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科(口腔病理学分野)の辻極秀次 准教授らによるもの。詳細は米国口腔病理学会の機関誌「Journal of Oral Pathology & Medicine」に掲載された。

歯はエナメル質、象牙質などからなり、エナメル質はエナメル芽細胞、象牙質は象牙芽細胞から作られるが、これまでの研究では、歯から得られた細胞を継代すると、象牙芽細胞への分化能が低下するなどの課題があり、象牙質を作る象牙芽細胞を試験管内で長期間安定して培養することは困難であった。

今回研究グループは、GFPラット歯髄組織から細胞を樹立し、同細胞が生体内および生体外で象牙質を形成する能力を有していることを確認。同細胞は、シャーレ内において多量のコラーゲン基質産生とカルシウムを沈着する象牙質シートを形成し、電子顕微鏡による観察では、基質小胞を核としたカルシウム結晶の沈着する像を観察することができ、象牙芽細胞に類似した性格を有していることが確認された。

また、同細胞をマウスの背部皮下に移植したところ、マウスの背中に象牙質様の硬組織が形成されることを確認。遺伝子の発現についての解析を併せて行ったところ、正常な歯の象牙芽細胞に特異的な遺伝子の発現が認められ、80代継代の長期間培養においても、これら細胞の性格は失われることは無く、安定して保持されることが確認されたという。

なお研究グループでは、今回樹立した細胞について、生体内および生体外で長期間安定して象牙芽細胞の性格を有していることが確認されたことから、今後、研究を進めることで、歯の再生医療研究の発展につながることが期待されるとコメントするほか、象牙質シートを形成する性格を有していることから、齲蝕や歯周疾患などの新規治療法の開発や、歯科再生医療に関する基礎的研究への利用が可能と考えられるとしている。