電通、東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)、ロボ・ガレージ、トヨタ自動車(トヨタ)の4者は6月26日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と進めてきた共同研究「KIBO ROBOT PROJECT」で開発した、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在するロボット宇宙飛行士「KIROBO(キロボ)」の完成披露会見を実施した。

会見には、電通 ビジネス・クリエーション局の西嶋賴親氏、東大先端研の特任准教授兼ロボ・ガレージ代表取締役社長でロボット・クリエイターでもある高橋智隆氏、トヨタ 製品企画室主査の片岡史憲氏がプレゼンターとして登壇し、それぞれプロジェクトについてや、KIROBOについて、各自のプロジェクトへの関わり方などについて語った(画像1)。その模様をお届けする。

画像1。左から西嶋賴親氏、高橋智隆氏、片岡史憲氏。高橋氏が持っているのがKIROBOで、片岡氏のがMIRATA

KIROBOとMIRATAについては、すでに幾度か記事になっているが、おさらいしておくと、KIROBO(画像2)は、電通がコンテンツ作成とプロジェクトのとりまとめを、東大先端研とロボ・ガレージがロボット躯体の開発と動作生成を、トヨタが音声認識を用いたロボットの知能化を担当して開発した小型のコミュニケーションロボットだ。8月4日にH-IIBロケット4号機(画像3)に搭載されるISS補給機「こうのとり」4号機(画像4)によって種子島宇宙センターより打ち上げられる予定である。

画像2。KIROBO。デアゴスティーニの「ロビ」やパナソニックの「エボルタ」と兄弟機という意匠の高橋デザインである

画像3。H-IIBロケット。写真は2012年7月に打ち上げられた3号機の様子。(c) JAXA

画像4。報道陣に公開された「こうのとり」4号機

そして、11~12月頃から始まる第38/39次長期滞在でISSに搭乗する(第39次では日本人初のISSコマンダーとなる)若田光一宇宙飛行士(画像5)の到着を待ち、12月頃からISS日本実験棟「きぼう」(画像6・7)にて「宇宙における人とロボットとの会話実験」を実施する予定だ。

画像5。左が若田光一宇宙飛行士。(c) JAXA/ESA

画像6。ISS日本実験棟「きぼう」。(c) NASA

画像7。ISS全景。(c) NASA

KIROBOのスケジュールはISSに到着後(8月10日頃)、NASAの宇宙飛行士の手によって梱包を解かれて動作確認がなされ、そこから9月にかけてのどこかで、まず発話を実施。これは、宇宙で初めてロボットが発話をする予定となる。そして若田宇宙飛行士との会話実験を12月頃からスタートし、2014年5~6月頃にISSから去る若田宇宙飛行士を見送った後、同年12月以降に地球へ帰還する予定だ。

なお、KIROBOは宇宙飛行士らしく、ちゃんとバックアップクルーがいる。それが、「MIRATA(ミラタ)」だ(画像8)。見比べてみるとわかるが、頭部の色がKIROBOはホワイトなのに対して、MIRATAはグレーである。胸元にある名前もそれぞれ異なるのはいうまでもない。そのほかは基本的に外見に大きな差異はないが、若干性能差はある。KIROBOには学習機能がないのに対してMIRATAにはあり、逆に宇宙搭載化に関してはKIROBOが備えられていて、MIRATAにはない。

画像8。バックアップクルーのMIRATA

一応、バックアップクルーということなので、KIROBOが積み込み直前に大破して打ち上げのための搭載に修理が間に合わない、などという不測の事態が起きた時はMIRATAが宇宙に行くことになるが、MIRATAはあくまでも地上においてKIROBOの不具合などの調査・検証を行うのと、KIBO ROBOT PROJECTの広報活動が担当なのである。

また機能については、KIROBOもMIRATAも一問一答対話、あいづち、感情推定、おうむ返し、顔認証、遠隔操作、情報通信機能、コミュニケーション動作を搭載。KIROBOの一問一答する様子と、MIRATAの挨拶はこちらのとおりだ(動画1・2)。

動画
動画1。KIROBOが、片岡氏と一問一答でコミュニケーションする様子。たまに音声認識に失敗して変な応答する時もあるが、それはご愛敬
動画2。MIRATAの挨拶。こんな感じで、実験の支持とかされたら、なんか楽しそう

身長は約34cm、全幅は約18cm、奥行きは約15cm、重量は約1000gとなっている。電源は、バッテリが安全性の問題をクリアできないことから、「きぼう」の電源とケーブルでつないで動作させる形だ。そして技術協力として、ヴイストン、クロスエフェクト、ユカイ工学、双葉電子工業、有人宇宙システム、HOYAサービスの6社の名称も発表されている。

若田宇宙飛行士とのコミュニケーションは、自律的な会話実験に加えて、地上からの遠隔操作も行われる予定だ。現在予定している実験の1つは、KIROBOを介して管制室からメッセージを伝えて、その支持のもとに、KIROBOが見守る形で若田宇宙飛行士に模擬実験をしてもらうという。ロボットが直接実験するわけではないが、手順を説明したり、手順に間違いがないかといったことを確認したりするのである。

そうした様子は公式Webサイトなどを通して随時公表していく予定だ。KIROBOは、空中に浮遊している状態、もしくは固定された形で実験を行う(画像9)。なおこうしたロボットを宇宙空間で動作させる際の問題点として、無重力(微小重力)のために空気の温度差による対流が起きないことから、サーボモータに熱がこもってしまうことを挙げられた。そのため、KIROBOには空冷ファンが取り付けられている。

画像9。若田宇宙飛行士との会話実験のイメージ

ちなみに、宇宙ロボットといえば、NASAとGMが開発したRobonaut-2(R-2:画像10)がすでにISSに運び込まれているが、KIROBOとR-2がツーショットを行うなどのコラボレーションの予定について西嶋氏にうかがってみたところ、今のところは未定という回答を得た。KIBO ROBOT PROJECTは商用活動であり、その際の写真や映像などの撮影には実はさまざまな制約があり、夢を壊すような話で申し訳ないが、所属機関や開発企業が異なることなどもあって契約的な問題が発生するため、なかなか実現は難しそうである(可能性がまったくないというわけではない)。

画像10。探査機などを除いて、宇宙にいった最初のロボットというと、このR-2になる。個人的にはツーショットを決めてもらいたい。(c) NASA

また片岡氏は、KIROBOやMIRATAに日本人の「和」の心を宿らせたいという。しかも3つの和があり、1つ目はチームワークやコミュニケーションを意味する「和」そのものを指す。2つ目は、総和ではなく「共鳴」であることを意味する「調和」とした。そして3つ目は笑顔を作る「和(なご)ます」としている。

そのため、コミュニケーション技術として「話し上手」(問いかけに答える一問一答対話)、「聴き上手」(あいづち、感情推定(共感)、おうむ返しをしながら聴く)、「覚え上手」(若田宇宙飛行士の顔を認識して、名前を呼んで挨拶する)という機能をKIROBOが備えているというわけだ。

さらにMIRATAに関しては、覚え上手の中に学習機能があって人との会話を通して成長することが可能だ。一般の人もサポーターとして一緒にMIRATAを育てていく(共育)プロジェクトも予定されているということなので、今後をお待ちいただきたい。

最後に高橋氏は今回のプロジェクトに対し、最初は自分を含めて数人の夢から始まり、それを実現できて非常に感謝する旨を伝え、「今回のプロジェクトのミッションが成功することによって、人とロボットが共存できる明るい未来が作れたらと思っています。応援よろしくお願いします」と挨拶を行った。

日本人は人とコミュニケーションするロボットというのは、アニメやマンガの影響が大きく、当たり前のようにとらえているが、世界ではそうしたイメージはまだまだのところが多いことから、それを今回のプロジェクトで世界中に発信したいとしている。今後も、KIROBOとそれをバックアップするMIRATAの奮闘が注目だ。