嶋田麻里氏

和食にワイン、最近では当り前の楽しみ方になっています。でも、和食もいろいろ、ワインもいろいろ。もし、組み合わせ方の基本があれば、ぜび知っておきたいですよね。航空会社の客室乗務員という仕事の傍ら、ソムリエ、和食マイスターなどの資格を取得し「ワインと料理のマリアージュ(結婚)」を楽しく追求し続けているという、嶋田麻里さんに聞いてみました。

ワインも日本酒もしょう油・味噌も、みな発酵・醸造食品という共通性

――ワインについてのごく初歩的な質問ですが、肉には赤ワイン、魚には白ワインという"常識"は全面的に正しいのでしょうか?

「ワインの本場フランスでも、お肉料理に白ワインを、お魚料理に赤ワインを合わせることがあります。お肉の場合は特に複雑で、牛肉、ラム肉、豚肉などの赤身肉と鶏肉やターキーなど白身肉とでは合わせるワインが違ってくるんですよ。お肉の部位や調理法、ソースなどもワイン選びのポイント。ですから、お肉には赤ワイン、お魚には白ワインとはある程度の目安と考えたらよいと思います」

――最近では、和食にワインといった組み合わせを楽しむ方も多いですね。

「私も和食にワインの組み合わせを楽しんでいます。和食の主食はお米、そのお米を主原料として造られる日本酒が和食にベストマッチなのは当然ですが、和食の基本調味料であるおしょう油やお味噌、日本酒、みりんなどは、ワインと同様すべて醸造して造られる発酵食品という共通点もあります。ですから日本酒をワインに置き換えても抵抗なく楽しめると思います。

それと、和食といっても多種多様ですよね。安土桃山時代にスペインやポルトガルから伝わった南蛮料理(天ぷらなど)や、明治時代以降に欧米から入ってきた肉料理(すき焼きなど)も、現在は和食として親しまれています。そんな外国由来の和食は日本酒に負けず劣らずワインにマッチするはずです」

――こういう和食には、こんなワインが合うといった目安はありますか?

「ポイントの1つとして、タレが主役の料理か、それとも素材が主役の料理かということがありますね。例えばお寿司やお刺身など素材が淡白で繊細さを生かす魚料理には白ワイン(辛めのリーズリングなど)やシャンパンが合います。一方、おしょう油やお味噌で煮込んだ濃いタレが主張する魚料理には、タレの主張に負けない存在感のある赤ワイン(ピノ・ノワールなど)が合うと思います。

それから、おしょう油の濃淡を基準にする考え方もありますね。薄口じょう油を使用した淡白であっさりした料理には白ワインを選び、濃口じょう油やお味噌を使った濃厚な料理には赤ワインが合うのではないでしょうか」

――鍋料理にもワインを合わせられますか?

「しゃぶしゃぶや水炊きなどの鍋料理には、シャンパンやお肉の旨みを引き立たせる赤ワイン。ゴマタレに合わせるなら白ワインで、コクのあるシャルドネなどがおすすめです」

「ワインと料理のマリアージュ(結婚)」を楽しく追求

――嶋田さんは、和食とワインの相性をご自分で試され実感されているのですか?

「私は『ワインと料理のマリアージュ』という言葉が大好き。今回はどんなマリアージュになるかなとワクワクしながらお料理し、ワインを選ぶのがとても楽しいです。

先に申し上げましたようなワイン選びの基本を踏まえつつ、いろいろな料理にいろいろなワインを試して、自分の好きなマリアージュを探していきます。時には失敗することもありますが、そんなときはワインのテキストを見直したり、先輩ソムリエの方に意見を聞いてみたり、それはそれで楽しいですね。

ワインは視覚、臭覚、味覚といった五感で楽しむものです。その五感は人それぞれ違いますから、ワイン選びに『絶対これ』というものはないと思うんです。ほかの方の意見もお聞きしながらも、今まで気づかなかった、感じられなかった自分自身の感覚を刺激し、新しい発見をしていきたいですね」

――ワインとお料理でおもてなしすることも多いのですか?

「職業柄もありまして、自宅に外国の友人をお招きして和食を召し上がっていただくことも多いです。ワインは多くの国で生産され、親しまれていますから、国が違っても共通の話題になって話がはずむんですね。

私はワインのソムリエだけでなく、和食マイスターという資格も取得しまして、和食の作法や歴史、旬の食材などについてもお話もできるようになりました。日本の文化である和食の話は、外国のお客さまにとても喜ばれます」

――ワインや日本酒以外のお酒でも和食とのマリアージュは楽しめますよね?

「もちろんです。和食には四季折々の豊富な食材に加え、生・焼く・煮る・蒸す・揚げるなど様々な調理法がありますから、日本酒やワインだけでなく、いろいろなお酒を季節、食材、調理法、シチュエーションなどに合わせていただくことができます。

会席料理(二汁七菜)やハレの日のお料理などには、シャンパンで幕開けしてワインもしくは日本酒や焼酎へと切り替える。いわゆるB級グルメなどには、ビールやお手頃なスパークリングを合わせて気軽に頂くのも楽しいですよね」

profile
嶋田麻里(しまだまり)
外資系航空会社フライトパーサー(客室乗務員)。日本ソムリエ協会ソムリエ取得、日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ・ジュニア和食マイスター取得。イタリア、香港、タイの料理教室にてディプロマ(修了証)も取得し、不定期だが自宅にて料理・テーブルコーディネート教室を開催している。