ポーラ化成工業は6月25日、化粧品に用いる種々の原料が角層細胞に与える影響について研究を行った結果、化粧品の基材としての役割を担う高濃度グリセリンが角層細胞を柔軟化、扁平化して肌のバリア機能を良化することを見出したと発表した。

ヒトの皮膚表面では、「角層」と呼ばれる組織がバリアとして機能し、体内からの水分蒸散抑制と外部からの異物進入を防いでいるが、そのバリア機能は、角層の大部分を占める角層細胞が、細胞間脂質が隙間を埋めることによって実現されている。角層細胞は下層では立体的な形をしているが、上層に行くにしたがって扁平な形となり、皮膚全体を覆うことができるようになり、その面積が大きいほど隙間が出来にくくなるため、バリア機能の指標として用いられている。

今回の研究では、化粧品使用時の即効的な肌改善実感について、化粧品基材そのものが角層細胞の形態変化をもたらす可能性があると考え、多くの化粧品に用いられる汎用性の高い基材と角層細胞形態の関係性についての研究が行われた。

具体的には、健常な被験者18名の前腕屈側部に30%グリセリン水溶液および純水を50μl浸したパッチテスト用テープを24時間貼付する形で実験が行われた。パッチ前後で角層表層をテープストリッピングし、得られた角層細胞について原子間力顕微鏡を用いて、角層細胞の面積、平均の厚みから、扁平度を求める式(扁平度=(投影面積1/2/厚み)×10-2)を用いて扁平度を算出し、水パッチ部位の角層細胞扁平度を1としたときのグリセリンパッチ部位の角層細胞扁平度を相対値で表した。

この結果、20~30%のグリセリン水溶液が、皮膚のバリアを破壊せずに角層細胞形態を即効で扁平化することを見出したという。

30%グリセリン水溶液による角層細胞形態変化(N=18の平均値)

また、この事実と、皮膚は筋肉の動きに合わせて伸縮するため、常に横方向に力がかかっているということを踏まえ、扁平化が横方向の力で引き伸ばされたという仮説のもの、30%グリセリン水溶液に浸漬した角層細胞の強度に関する研究として、健常な被験者の前腕屈側部からテープストリッピングにて角層細胞を採取し、30%グリセリンまたは純水に24時間浸漬した後、ナノインデンターを用いて押し込み深さ30nmにて角層細胞の硬さを測定したところ、グリセリン水溶液への浸漬により、角層細胞が柔軟に変化したことを見出したという。

各種溶液処理した角層細胞の硬さ(N=3)の平均

これは、高濃度グリセリン水溶液が、角層細胞のケラチン構造に何らかの影響を及ぼした可能性が高いと考えられる結果をデータをもとに示すことができたものであり、同社では、扁平化した角層細胞が、より高いバリア機能への寄与や肌表面の柔軟化実感へつながることが期待されることから、今回の成果を活用した化粧品をポーラから2013年秋に発売する予定としている。